“超一流の脇役”の生き様反映した快挙
“超一流の脇役”の誕生だ。ロッテ・岡田幸文外野手(30)が、7月31日の日本ハム戦(QVCマリン)の二回、死球出塁し、プロ初打席から1771打席連続で本塁打なしの日本新記録を樹立。この日の試合で1773打席にまで伸ばした。
「試合に出続けていないとつくれない記録。自分らしい記録かなと思っています」。照れながらも、岡田には、ある種の誇りがにじんでいた。表彰されるたぐいの記録ではないが、決して不名誉なものではない。むしろこの数字は、岡田がプロ野球選手として確かな歩みを続けている“証”でもあるからだ。
作新学院高時代も、本塁打は練習試合での1本のみ。日大中退後に所属した全足利クラブ時代に、栃木県鹿沼市運動公園野球場で放ったのが、これまでの球歴で公式戦唯一のアーチだ。だが、“非力”ともいえた打撃を補って余りある俊足と巧守がスカウトの目に止まり、08年秋の育成ドラフトで入団。09年に支配下登録され、10年に1軍昇格した。
同年の中日との日本シリーズ第7戦では、浅尾から決勝三塁打を放ち、下克上日本一に貢献しブレーク。翌11年には、育成出身選手では初のシーズン全試合出場を成し遂げた。外野手としてシーズン連続守備機会無失策359のリーグ新記録をマークし、ゴールデングラブ賞も11年から2年連続で受賞。球威屈指の名手の成長した。
岡田は10年6月に1軍初昇格して以降、2軍落ちの経験がない。鉄壁でハイレベルな守備力において、岡田に取って代わる者はいないからだ。今回の“珍記録”は、その高い技術を武器に出場機会をつかんできたことによって、自然とついてきたものなのだ。
育成出身選手では、昨季には巨人・山口が6年連続60試合登板という前人未踏の記録を更新したが、何よりタフさという武器があって生まれたもの。岡田もそうだ。自らが何を求められているのか。その武器となる一芸を、どん欲に磨き続けた結果に他ならない。「ホームランを打てなくてもプロ野球選手でいられるというところを、子供たちに見せたい」。この記録は、岡田の生きざまそのものと言っていい。
ちなみに、プロ初打席からに限らない「連続打席本塁打なし」の日本記録は、赤星憲広(阪神)が持つ2528打席。「赤星さんは理想の選手。僕もそこに並びたい」。これからも岡田は、ブレることなく自らのスタイルを貫き、さらなる“偉業”を目指す。(デイリースポーツ・福岡香奈)