“ほぼ素人”だった今成のサード転向
阪神で今年一番の成長株と言えるだろう。三塁転向1年目の今成が、守備で飛躍的な上達を遂げている。三塁で63試合に出場して失策は2。規定試合数(チーム試合数×2/3)の63・3試合にわずかに足りないが、規定に到達すれば巨人・村田、DeNA・バルディリスらを抜いてリーグトップに躍り出る(数字は5日現在)。転向初年度にゴールデングラブを獲得する可能性もありそうだ。
三塁転向までの経緯を振り返ってみたい。05年高校生ドラフト4巡目で捕手として日本ハムに入団。12年の開幕後に阪神へ移籍すると、打力を買われて外野にも挑戦した。
そして、昨秋に新加入した高代内野守備走塁コーチの「右翼で打球を捕ってからの足の運びとか、送球を見てたら捕手より野手の方がおもしろいんじゃないかと思っていた」という提案でコンバートが決まった。
今成が三塁でプレーするのは小学校以来。練習開始当初はほぼ素人だった。内野手は5本の指をそのままグラブにはめるが、今成は小指と薬指を2本とも小指部分に入れる“外野手仕様”で練習を続けていたほどだ。
だが、その後は周囲の想像を上回る速度で成長を遂げた。過去に木村拓也(元広島、巨人)、江藤智(現巨人2軍打撃コーチ)を捕手から内野手に転向させた高代コーチも驚くほどだ。
「成長は予想よりはるかに速い。倍以上やね。江藤、キムタクは2人とも捕手の癖を持っていた。(ワンバウンド捕球時に)膝を着くこととかね。今成はその癖があまりなかった。ポジションを取ってやろうという気迫も感じるね。基本しか教えていないけど、言うことを忠実にやってくれているし、素直に取り入れてくれている」
オープン戦では打率・341と結果を残し、3月28日の巨人との開幕戦は「6番・三塁」で先発。しばらくは新井良らとの併用が続いたが、守備での安定感もあって定位置をつかみつつある。今では先発を外れた試合は、守備固めとして出場するほどチームの信頼も高まってる。
それでも今成は試行錯誤が続いているという。「打球を捕るにつれて自信につながっていくと思うけど、まだ確信はない。毎日、反省と課題を合わせながら、こうした方がいいかなとか考えながら練習している。今は丁寧に捕って、正確に投げることだけを考えている」。他球団の選手のプレーを研究するなど、勉強しながら日々を過ごしている。
現在は打撃も好調で、今後も出場機会が減ることは考えづらい。阪神の三塁手部門でゴールデングラブ賞を獲得すれば92年のオマリー(現阪神打撃コーチ補佐)以来となる。日本人に限れば85年の掛布(現阪神DC)以来だ。くしくも昨秋キャンプで掛布DCに「小掛布」と命名された今成が今オフ、球団史に名前を残すかもしれない。(デイリースポーツ・西岡誠)