大学生投手のドラフト戦線に異状あり?
10月23日のドラフト会議まで、1カ月を切った。年明けの段階で「今年は大学生投手が豊作」とされた勢力図が、大きく変わっている。1位候補に挙がっていた投手が軒並み、昨年のようなパフォーマンスを発揮できていないのだ。
最大の目玉候補である早大の156キロ右腕・有原航平投手は、今月上旬に右肘違和感を発症。開幕週(13、14日)の法大戦はベンチを外れた。28日の明大戦で今季初登板。中継ぎで3回無失点、5奪三振と回復ぶりをアピールして、スカウト陣をホッとさせたものの、本人も「直球はまだ走っていない。5~6割」と認めるように、本調子に戻るには時間が必要だ。
明大の左腕・山崎福也投手も、開幕カードの東大戦は救援登板。27日の早大戦で今季初先発した。6回3失点で今季初勝利、リーグ戦現役最多の通算20勝目を挙げたものの、直球の大半は140キロ前後。年間11勝した昨年は、常時140キロ台中盤を計測していた。今春は3勝。秋の投球に対するスカウト陣の評価も「春よりよくなっている」、「春と課題が変わっていない」と割れている。
同じ東京六大学勢では、法大の最速150キロ左腕・石田健大投手も苦しんでいる。春は3勝4敗と負け数が上回り、今秋も0勝2敗で防御率3・65。ドラフト上位候補の数字としては、物足りない。四回途中4失点で降板した開幕戦の早大戦では「最悪。すべてかみ合わなかった」と話していた。2度目の先発となった立大戦は7回1失点と復調気配だっただけに、調子の波をなくせるかが、キーになりそうだ。
東都でも、亜大のエース・山崎康晃投手が、開幕戦の中大戦で八回途中5失点を喫して敗れた。「ふがいない投球をしてしまった」と振り返ったように、2カード目の拓大戦からは、2回戦の先発に回った。26日の青学大戦では11回2安打無失点で九回に148キロを計測。3年秋のような球威十分の直球で押す最速151キロ右腕らしい姿が、ようやく見られたところだ。
最も厳しい時を過ごしているのが、中大の島袋洋奨投手。今春から制球難に陥り、春は0勝2敗、秋は2試合登板も先発の機会はまだない。秋田秀幸監督が「ブルペンでは、いいボールがいっている」と話すように、興南で10年に甲子園春夏連覇したトルネード左腕の素材は紛れもなく一級品。単純な不調ではないだけに、プロ側の判断も難しいだろう。
東京六大学勢と東都勢の投手が調子を落とし、何人ものスカウトから「今年は1位の12人が、パッとそろわない」という、ため息交じりの言葉を聞いた。本来の状態ではなくとも複数球団の競合が確実視される有原は別格として、今秋の内容次第で、これまでと違う顔ぶれが一気に人気を集める可能性もある。今夏の大学日本代表に選出された九産大の144キロ変則左腕・浜田智博投手や、東農大北海道オホーツクの151キロ右腕・風張(かざはり)蓮投手ら、地方大学の快腕への評価は高まっている。また、京大から初のプロ野球選手誕生の期待がかかる右腕・田中英祐投手は、投げっぷりのよさと安定した内容を買われている。
あるスカウトは「今年は社会人も含めて、即戦力が少ない。最終的には、1位の半分が高校生になるかもしれない」と話していた。下級生時に高評価されていた顔ぶれの巻き返しはあるのか。評価が一変する可能性がある、大学生のラストシーズンに注目したい。(デイリースポーツ・藤田昌央)