V経験という財産が消えつつあるロッテ
昨季のAクラスとBクラスとがごっそり入れ替わった今季のパ・リーグ。ロッテは10月1日、Bクラスでシーズン全日程を終えた。昨季は3位でCSファイナルSにも進出。開幕前の下馬評では、優勝候補、あるいはAクラスは固いとさえ言われたが、終わってみれば借金10と苦しんだ1年だった。
経験豊富な先発の3本柱が、期待どおりの働きができなかったことが要因のひとつに挙がる。新戦力として西武からFA移籍してきた涌井は、後半戦に巻き返したものの、8勝12敗と寂しい数字に終わった。唐川も不振による2軍降格を味わい、4勝9敗。エース成瀬は勝負所で踏ん張れず、9勝11敗だった。
もちろん、打線が投手陣を援護できない試合も数多くあった。しかし、実力ある3人で貯金を1つもつくれなかったことを考えると、誤算と言わざるを得ないのが実情だ。
さて、今季限りで、正捕手としてチームを支えてきた里崎が現役引退した。ロッテは2005年に日本一となり、5年後の10年には、レギュラーシーズン3位ながら日本一を果たしたが、その2度の栄冠に貢献したV戦士が、また1人、チームからいなくなった。
この4年間で、チームの戦力は大きく入れ替わった。投手陣は、2度の頂点に貢献した藪田、小野、渡辺俊らが抜けて若返った。先発陣で美酒の味を真に知るのは、10年の下克上日本一の原動力となった成瀬くらいだ。
野手で言うと、福浦、サブロー、井口のベテラン勢は健在だが、チームを引っ張っていくべき中堅勢で当時を知るのは、もはや今江だけとなっている。角中、鈴木らが核となり、世代交代が進んでいるが、その中で、優勝経験という財産を継承していくことも、ひとつ大事なことのように思う。
シーズン終了に際し、成瀬がこう話した。「今、ロッテは変わっていかないといけない」。今季、不本意な成績に終わった自身を責めるとともに、チームからVの財産が消えつつあることへの危機感を口にした。長年バッテリーを組み、勝負の厳しさを叩き込まれた里崎の引退も、左腕がそう強く感じるきっかけのひとつだったという。
その成瀬は、今年5月に国内FA権を取得。権利行使の有無については現在、明言を避けているものの、自らとチームの現状を冷静に見つめる左腕は、どういう結論を出すか。
いずれにせよ、巻き返しを図るロッテの来季への道は、既にスタートしている。
(デイリースポーツ・福岡香奈)