オリ伊藤 その名の通りキラリと光った
5年連続Bクラスだったオリックスが今季は2位に躍進した。チーム防御率は12球団唯一の2点台。抜群の投手力を支えたのが、伊藤光捕手の存在だ。
エース・金子も開幕8連勝の西も、試合後は決まって「いいリードをしてくれた」と口をそろえた。その信頼度は絶大だ。金子には多彩な変化球と直球のコンビネーション、西は制球のよさを生かし、コーナーを突いたリード。巧みにその特長を生かした。
スタッフ陣も「光の成長が今季の好調のカギ。データを自分なりに消化し、投手のいい部分を引き出している」と評価する。
椎間板ヘルニアで苦しんだ過去もあり、体のケアは人一倍、気を遣う。データを整理して球場を出るのはナインで最後。オフにはウオーキングのトレーニングを取り入れ、走塁やケガ防止に努めた。
相乗効果か、打撃力もアップ。オーダーでは9番を打つことがほとんどだが、満塁での打率は5割を超えた。「打順は9番ですが、チャンスでは3番、4番だと思って打席に入っている」。頼れる“恐怖の9番打者”だった。
スマートな外見でありながら、内に秘めた闘志は並外れている。捕手にはケガが付きもの。本塁付近で走者に激しいタックルをされることもあったし、打席に立てば死球も受けた。しかし、「ケガは大丈夫?」と質問しても「はい」という答えだけが帰ってきた。1年間を通じて、故障による離脱はしたことがなかった。
CSファーストSの最終戦を終えた後、初めて本音を明かした。「本当はずっと、どこかしらケガを抱えていた。でも痛めている箇所を明らかにすると、対戦相手にとって有利な情報を与えてしまうことになる。だからずっと、痛くないふりをしていました」。正捕手としての自覚をあらためて感じさせる一言だった。
11月には日本代表の一員として参加する日米野球など、さらなる飛躍の舞台も待っている。その名の通りキラリと光る存在で、来季こそチームをリーグ優勝へ導くことだろう。
(デイリースポーツ・中野裕美子)