昨年の阪神2位・横田の開花に期待

 2013年のプロ野球ドラフト会議から、1年が経過した。昨年は、西武に1位指名された森友哉捕手が注目を浴びた。大阪桐蔭時代の輝かしい実績を引っさげてプロの門をくぐると、1年目ながら7月末には1軍昇格。プロ初本塁打から、3試合連続本塁打を放つなど、ドラ1の実力を示した。

 その森の実力に惚れ込んだのが、阪神の掛布雅之DCだ。2月の春季キャンプ中、阪神-西武の練習試合で初対面。森の打撃を絶賛していた。それから5カ月。再び対面した7月のフレッシュオールスターでは、森の成長に衝撃を受けた。

 掛布DC「スイングスピードが圧倒的に速くなっていた。2月のキャンプのときは『いいスイングだな』ぐらいだったが、フレッシュオールスターのときの(スイングの)速さには驚かされた。すでに、プロのスイングになっていたね。森くんはケガさえなければ、西武で15年ぐらい正捕手でもやっていけるはず。1年目にしてDHで出してもらえるのは、実力がある証拠」

 森の実力に太鼓判を押した掛布DC。一方で、その森を超える素質を持つ逸材が阪神にいると話す。その選手こそ、昨年ドラフトで阪神に2位指名された横田慎太郎外野手である。

 高卒1年目の横田は森と同級生。鹿児島実業から阪神入り。甲子園出場はなく、高校通算本塁打は29本。だが、身長186センチ、体重85キロと恵まれた体格は、オリックス・糸井選手とほぼ同じサイズ。横田のあこがれの選手でもあることから「糸井2世」と期待され、関西では注目を浴びた。

 掛布DCは横田を「大器晩成型」と評する。高校生離れした体格。長打を打てるパワーに加えて、50メートル走は6秒1の俊足。「あれだけの体がありながら、スピードもある。可能性なら森くん以上のものを持っている。しっかり成長すれば、森くんを上回る成績を残す可能性は十分にあると思う」と話す。

 大きな期待を寄せるのは、可能性を秘めた素質以外にもある。掛布DCが、鳴尾浜で横田を初めて見たときは「ダメだな」と思ったという。スイング時の右肘や右手首の使い方の基本が全くできていなかった。当初、ルーキーのフォームはいじらないと決めていたが、見るに見かねて、春季キャンプ中にその部分だけ修正に着手した。すると、徐々に悪癖が改善された。このときのように、教えたことがすぐに身につく「吸収力」は、横田の特長のひとつだ。

 森は大阪桐蔭時代に、全国大会や世界大会など常に高いレベルに身を置いていた。一方、横田は全国レベルを経験せずに、プロの世界に飛び込んだ。プロ入り当初、高校の野球部にはなかった自身初体験のストレートマシンに苦戦したほど。だが、2軍公式戦の出場機会が増え、プロ野球に慣れ始めると、シーズン残り1カ月で6本塁打を量産した。

 このとき掛布DCは「対応力というか、吸収力がすごい。出だしを考えたら、これだけ打てばたいしたもの。ケガはしないし、体が頑丈なところが強み。プロで戦っていくためには大きな武器。持っているものは確かだし、将来が楽しみ」と評価した。

 ただ、現状は「可能性がある」というレベルだ。掛布DCは言う。「その素質が開花しない可能性もある。そうやって消えていった選手はこれまで何人もいるから。球団が可能性を開花させてあげることができなければ、そのまま消えることもある」

 1年目の今季、2軍公式戦79試合に出場して、打率は・225。変化球や1軍クラスの直球への対応はまだまだだ。掛布DCが「7~8割は完成されている」という森に対し、横田はプロ野球選手として、ほぼ0に近いところからスタートしている。走攻守において、基礎から学ばなければいけない。ここからは本人の努力はもちろん、阪神の育成手腕が問われる。

 ミスタータイガースが見いだした素質が「原石」のまま終わるか、光り輝くか。限りない可能性を秘めた阪神・横田慎太郎の成長が楽しみでならない。

(デイリースポーツ・西岡竜一)

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