ドラフトに見えた“地方大学”の存在感

 球界の一大イベントといえるNPBドラフト会議が23日に行われ、今年は104人(育成含む)が指名された。各球団が頭を悩ませる1、2位の上位指名を見て、気づいたことがあった。それは地方大学の存在感だ。

 プロを輩出する大学といえば、まず思い浮かぶのは東京六大学と東都。しかし、今年はそれ以外の大学からの上位指名も多かった。

 東京六大学と東都からは

 ロッテ1位=中村奨吾内野手(早大)

 日本ハム1位=有原航平投手(早大)

 オリックス1位=山崎福也投手(明大)

 DeNA1位=山崎康晃投手(亜大)

 DeNA2位=石田健大投手(法大)

 広島2位=薮田和樹投手(亜大)

 巨人2位=戸根千明投手(日大)

 それ以外の大学からは

 広島1位=野間峻祥外野手(中部学院大)

 ヤクルト2位=風張蓮投手(東農大北海道オホーツク)

 中日2位=浜田智博投手(九産大)

 ロッテ2位=田中英祐投手(京大)

 西武2位=佐野泰雄投手(平成国際大)

 1位は“2大リーグ”が4-1と優勢だが、1、2位を足した数は、7-5とそれ以外の大学が肉薄する。ちなみに甲子園出場経験者の数は4-1だ。ブランド力では及ばない大学が、入学からの4年間で差を詰めていることが見て取れる。

 全国的な注目度こそ低いが、野球に取り組む環境を備えている地方大学は多い。グラウンドや室内練習場の練習施設、そして指導者も中央球界と遜色はない。以前から東北福祉大や九州共立大など、多くの選手をプロに送り出す大学はあったが、最近はさまざまな校名を目にするようになった。高校では華々しい実績を残せなかった原石が、地方で一級品に磨かれるケースは増えている。

 ヤクルト2位の風張は、岩手の県立校・伊保内高の出身。高校3年時にもドラフト候補に挙げられた右腕だったが、東農大北海道オホーツクの樋越勉監督は、プロのスカウトが注目する前の2年秋には同校を訪れて、練習を視察していた。同監督の「北海道から一緒に日本一を目指そう」という誘いに、進学を決断したそうだ。

 投手に関しては、練習内容は突き詰めれば、ランニングなどの体作りとピッチングに集約される。リーグのレベルに左右されず、個人の取り組み次第で大きく力を伸ばせる。京大の田中は、その代表例だろう。

 また、近年は大学とプロの交流試合も盛んになった。野手に関しても、客観的に実力をチェックできる機会ができた。中部学院大の野間は、東海地区リーグ選抜の一員として臨んだ巨人2軍との試合で、2安打1打点1盗塁と存分にアピール。プロ側の評価を不動のものにした。

 地方からは来年のドラフト上位候補にも、富士大・多和田(たわた)真三郎投手、仙台大・熊原健人投手、福岡大・唐仁原(とうじんばら)志貴投手らが名を連ねる。地理的には地方とはいえないが、帝京大・西村天裕投手もOBにプロは少ない大学で、1位候補と評されるまでに成長している。プロを目指す有望な高校生は、まず東京六大学か東都へ-。そんな流れは、いずれ定番ではなくなるかもしれない。

(デイリースポーツ・藤田昌央)

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