日本を救う?恐るべし“ケイノミクス”

 「テニスがかつてこれほどまで注目を浴びたことがあったでしょうか」。行く先々で関係者が口を揃えた。全米オープン準優勝、ツアー4勝と大躍進のシーズンを終えたテニス男子の錦織圭(24)=日清食品=が帰国後、スポンサー企業のイベントに出席。今、最も旬なアスリートの空前のフィーバーのすさまじさをまざまざと見せつけられた。

 9月の全米オープン準優勝後、その経済効果は300億円とも伝えられたが、その後も日本で開催された楽天オープンを始めツアー2勝、ATPツアーファイナルで4強入りなど快進撃は続き、“錦織銘柄”は絶好調となっている。

 錦織のラケットを手がける、ウイルソンのラケットスポーツ商品部の谷泰仁さんは「今季のモデルはこの2カ月で例年の2・5倍の売り上げでした」と明かした。またその効果はテニス業界全体に及んでいるようで「ラケットはもちろん、ストリングスや、グリップテープまで欠品になっている。うちだけじゃなく他社の製品も特にジュニアの製品は品薄になっている。テニスクラブの方に聞くと、入会者も空前の申し込みで、退会率はこれまでの半分だそうです。すごいフィーバー」と驚きを隠さなかった。

 都内のテニスクラブ関係者に聞くと、今季の錦織の活躍で、入会申し込みが殺到。入会を断らざる終えない事態も出てきているという。日本テニス協会の調査によると、ここ近年テニス人口は減少傾向。この2013年の調査では10年で423万人から373万人と約50万人減少しているほか、テニスコートは約3分の2となっていたが、間違いなくこの流れを変えるきっかけとなりそうだ。

 また、世界的な人気スポーツだけに、その波及効果はテニス界だけに止まらない。スポンサー契約を結ぶ高級時計タグホイヤーの錦織が試合中につけている「タグホイヤー・プロフェッショナル スポーツウォッチ」は、税込み22万6800円と高額ながら国内ではすでに完売。ATPツアーファイナル出場決定後、3週間で、「過去10年分の売り上げ」を記録したという。

 また高級外車のジャガーは今月20日から、錦織が企画から参加した「Fタイプ KEI NISHIKORI EDITION」の受注を開始したが、価格が1046~1526万円(税込み)にもかかわらず、当日に多数の問い合わせが届いたという。限定35台の販売だが、完売も時間の問題。ジャガーの若林敬市広報部ディレクターは9月の錦織のブランドアンバサダー就任以降について「ネットのアクセス数は10倍になったし、サイトの登録者も大幅に増えた。集客力がすごい」と話し、その効果に舌を巻いた。

 個人消費が冷え込み、“アベノミクス”の成果の是非が問われている一方で、天井知らずの“ケイノミクス”。まだ24歳でテニスプレーヤーとしてはこれからが最盛期。この勢いはまだまだ続きそうだ。(デイリースポーツ・大上謙吾)

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