Perfume米国で成功の鍵は「変」
11月26日にNHK「紅白歌合戦」の出場者が発表され、女性3人組テクノポップユニット・Perfumeが今年も名前を連ねた。7年連続7回目。すっかり“年末の顔”となった彼女たちが、今年は3度目のワールドツアーで念願のアメリカ公演を成功させた。最終日となる11月15日(日本時間16日)の米ニューヨークでのライブを現地で取材し、北米での成功の鍵は2つの“変”にあると感じた。「変えぬもの」と「変えるもの」だ。
1つは「不変」。会場を満員にした3200人は、ほとんどがネット動画などでPerfumeを知った現地ファンだった。日本でのライブでは、MCが長いことで有名。海外ではどうするのかと思いきや、ファンから通訳を募り、海外公演では異例といえる尺をMCに使った。12年のアジアツアーで編み出した“発明”という。
メンバーの動きをファンがマネする「PTA(パッと楽しく遊ぼう)」と呼ばれるライブ恒例のコーナーも、そのまま輸出した。恐らく戸惑った人もいたと思うが、ファンとの距離感を大事にするのがPerfume流。言葉の壁を越えて、海外でも貫いた。
米ロサンゼルス公演には、シカゴ出身の4人組バンドのOK Go(オーケーゴー)が来場。奇抜なPVで知られ、新曲にPerfumeがカメオ出演している。楽屋でのやりとりを、あ~ちゃんが明かした。
「『君たちは本当にすごいパフォーマンスをしていることを自覚しているか?僕たちは、こんないいライブはできない』って、そこまで言ってくれて。日本人が(自国でのライブを)そっくりそのまま(アメリカに)持ってきたことがあまりなかったらしく、演出の部分でも日本と近いことをやらせてもらっているので(よかったです)」
もちろん、最大の持ち味はクールなEDMサウンドと手足の細部にまで神経を張り巡らせたダンスだ。演出面でも機材的に日本と比べ制限がある中、スタッフが奮闘したという。かっこよさと人間味がミックスされた、曲間を含めた彼女たちの自然体が、新鮮さを持って受け入れられたのではないかと感じた。
2つ目は「変化」。どちらかといえば“カワイイ”“アイドル”といったクールジャパン的な人気なのかと思いきや、現地ファンの声は純粋に音楽性を評価するものが多かった。プロデューサーの中田ヤスタカ氏の名前に言及する人も珍しくなく、現地メディアからは「バブルガムポップからテクノポップに成長した」との声も上がった。
その音楽面でいえば、今回のツアーに合わせて、初めて中田氏以外の人が楽曲をリミックスしている。10月末に発売した全米盤収録の「Spending all my time」だ。世界的なベルギー人DJデュオによるリミックスで、NY公演でも1番といっていい盛り上がりを見せたのが、この曲。オリジナルよりも重低音を響かせ、よりダンスミュージックとしての色を強めている。
この変化をあ~ちゃんは「歩み寄りたかった」と表現した。「それ(中田氏以外のリミックス)をやってきていなかったので少し抵抗はありました。でも、アメリカの方にもス~と入ってきてもらいたかった」と悩みながら決断したという。
変えぬものは変えない。変えるものは“タブー”でも変える。自分たちの魅力とファンの気持ちを考えた、両極の発想が北米のファンにも届いたのだろう。ニューヨーカーたちは、日本にも負けず劣らずの熱狂で縦揺れし、腕を天井に突き上げていた。
結成当時10代前半だった広島出身の3人は、これからも国境を越えてファン層を広げていくはずだ。(デイリースポーツ・古宮正崇)