日本ハム・宮西のキャプテンシーに期待
今オフのFA戦線、日本ハム残留か他球団への移籍かで注目を浴びた日本ハム・宮西尚生投手(29)。獲得に興味を示していた阪神へ移籍の可能性も取りざたされたが、育ててくれた日本ハムへの恩義、球団への愛着が勝り、権利を行使せず残留を選んだ。
その左腕が来季、投手ながらチームの主将に就任。リリーフ投手が務めることは、球界では異例中の異例といっていい。中継ぎ投手がどうチームをリードし、キャプテンシーを発揮するか見ものだ。
11月22日。札幌ドームで行われたファンフェスティバル。壇上のあいさつで、栗山監督が3万人超の前で公言した。「来年、日本一になって皆さんと喜びたいです。そのためのキャプテンを、この場で発表します。来シーズンは宮西尚生」。会場からどよめきが起こった。
日本ハムでは2004年に東京から北海道へ移転してから、キャプテンは毎年、野手が務めてきた。ほぼ全試合、グラウンドに立てる選手が担うべきであるのが通常だろう。
栗山監督は抜てきした理由をこう説明する。「今年も投手陣が苦しい時に、みんなを集めているのを見ていた。チームが苦しい状況の中、ブルペンで肩をつくりながら大変だったと思うけど、ミヤがやることでいいコミュニケーションがとれている。どうしてもやって欲しかったんだ」
今季、若手を積極起用したチームで、年齢的にも投手陣ではリーダー的存在を担っていた。その姿を見て、監督もリリーフながら主将に決断したのだ。
確かに、若手を引っ張り、時には叱咤(しった)激励でチームを鼓舞していた。今年7月には、20歳になった大谷を食事に誘い、酒を酌み交わしながら話を聞いたという。大谷にとってもいい息抜きになったはずだ。大谷に限らず、他選手の相談役も買って出ていた。
若い選手にとっては頼りになる兄貴分になるはずだ。宮西は「監督、コーチには意見を言えるタイプなんでね。キャプテンとして直接言う。うまいことパイプ役としてやっていけたら」と言う。
時には目上にも意見を言えるリーダー。一般企業で言えば、首脳陣は経営者、選手は組合員として例えるなら、宮西はいい労組委員長になれる逸材だろう。日本ハムは、投手起用の分業制が徹底したチームだ。先発が5、6回を投げ、後はリリーフにつなぐ。宮西を含め、クロッタ、増井、谷元ら質のいいリリーバーで逃げ切りを図る。
ただ、全試合、全力で、決して捨て試合をつくらないのが栗山監督の掲げる野球。現に「144試合のうち、この1試合しか見に来れないお客さんもいる。そういう人のためにも全部、勝ちにいく」と公言する監督。リードされていても、時には勝ちパターンのリリーフ陣をつぎ込むこともある。酷使される可能性もある。
そんな時にリーダー格の宮西が、投手陣の現状を投手コーチに提言したこともあるという。「体と気持ちがついていかない時、どうするか」。チームのためには、上司への提言も惜しまない。
いい選手がいても、首脳陣と選手の意思疎通が図れず下位に低迷したチームは過去にもよくある。そうならないためにも「いろんな意味で後輩を助けて、サポートできるようにしたい」。チームの風通しを良くするため、新キャプテンは心を鬼にして、首脳陣にも忌憚(きたん)のない意見を言う。
(デイリースポーツ・水足丈夫)