関東馬が牡牝2歳G1制した大きな価値

 今年から2歳牡馬王者決定戦・朝日杯フューチュリティSが、昨年までの中山から阪神外回りへ舞台が変更された。もともとこの舞台で行われていた2歳牝馬G1・阪神ジュベナイルフィリーズと合わせて、暮れの2歳G1は牡馬、牝馬ともに阪神芝1600メートル外回りコースで行われることになった。

 これによって美浦所属の2歳馬は毎年、関西圏までの長距離輸送対策を求められることになった。まだデビューして数少ないキャリアで迎える大一番。美浦の厩舎関係者に聞いても「2歳時の長距離輸送は少なからずリスクがある」と話すように、このレースに勝つためには、能力の高さだけではなく他のレース以上に体調管理の問題が重要視されることになった。

 美浦所属馬で今年の阪神JFに出走したトーセンラーク、それに朝日杯FSに出走したダノンプラチナ、ネオルミエール、ブライトエンブレムの4頭はその対策のひとつとして、関西馬の拠点である栗東トレセンへ早めに入厩。レース当日は関西馬と同じように栗東から阪神競馬場までの輸送で臨む形を選択した。

 入厩期間はそれぞれの陣営で違うが、やはり一番の目的は長距離輸送に対してのリスク軽減。4厩舎それぞれの調教師に早めの栗東入りのメリットを聞いたところ、誰もが「レース直前に長距離輸送がなく、関西馬と同じ調整過程で臨める。2歳馬にはそれが大きい」と話した。

 美浦所属馬は茨城県美浦トレセンの施設で仕上げてレース直前に開催競馬場へ輸送をするのが通常だが、まだ幼い2歳馬にとっては輸送の影響でイレ込んだり、極端にカイ食いが落ちたりする馬も少なくないのが現状だ。

 そんななか今年の阪神JFを勝ったショウナンアデラ、朝日杯FSを制したダノンプラチナはともに美浦所属馬だった。それぞれの陣営が勝利へ向けて入念すぎるほどの対策を講じ、しっかりと勝利をもぎ取った。

 朝日杯FSのダノンは前記した通り、早めの栗東入厩で落ち着かせ、これまでのレースと同じ雰囲気で臨める状況をつくってきたことが一番の勝因。それに対して美浦から直前輸送で臨んだショウナンはレース2日前に美浦を出発して阪神入り。レース前日はスクーリング(パドックや装鞍所などレースの時に通る場所をひと通り歩く)を行った。早めに入厩することで現地の環境に慣らす狙いもある。そういう陣営の努力がこちらもしっかりと実った形だ。

 これで今秋の平地G1は関西馬が6勝に対して、関東馬は4勝。ただ、他のG1よりもレースへ向かう条件が厳しい2歳G1を2戦とも制した価値は大きい。

 朝日杯FSをダノンプラチナで制した蛯名正義騎手が「もっと関東馬が頑張って競馬を盛り上げていきたい」と話したように、関西馬に追いつき追い越せと、美浦の関係者も日々、切磋琢磨(せっさたくま)している。

(デイリースポーツ・塩手智彦)

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