野球界の“台湾市場”が熱くなったわけ

 今オフのプロ野球各球団の外国人補強に変化が見られた。それは台湾球界を経由した選手が多く見られたことだ。

 中日には台湾・統一ライオンズに在籍したアマウリ・リーバス投手が、日本ハムには義大ライノスで先発として活躍したビクター・ガラテ投手が入団。西武はテストで義大にいたエスメルリング・バスケス投手と、今季、ラミゴ・モンキーズでセーブ王に輝いたミゲル・メヒア投手を獲得した。

 異色は台湾体育大学から西武に入った郭俊麟投手。アマ球界から直接、日本プロ野球入りした。21Uワールドカップでは台湾のエースとして活躍し、決勝戦では日本打線を封じ込めた右腕への期待は高い。以上いずれも投手の5選手が台湾球界から日本球界へ飛び込んだ。

 これまでの外国人獲得ルートの主流は米国経由だった。近年になって韓国球界経由でNPBへ進出する外国人が多数見られるようになった。代表例としてグライシンガーやウッズ、今季巨人で投げたセドンもその一人だ。

 実力的に日本に近い韓国で通用する選手は外れが少ないということで、各球団の渉外担当もリスク回避の上でも好んで韓国への視察へ出掛けていた。ところが、今オフの韓国経由選手はソフトバンク入りが決まった前サムスンのバンデンハークくらい。その図式が変わりつつある。

 理由は韓国球界の人気沸騰にある。ここ数年、韓国ではプロ野球観戦がブームとなっている。女性客が多く詰めかけ、観客動員は増加の一途をたどる。そのため球団も大きく収入を増やした。そこへきて、FA制度の導入もあり、選手の年俸が高騰。日本円で億を超える選手も珍しくなくなってきた。

 これまでは韓国で好成績を挙げた選手を日本球団が獲得に乗り出した場合、それでも米国から直輸入する選手に比べて安い年俸で獲得することができた。韓国選手の年俸高騰により、韓国球界入りした外国人も安価での獲得が難しくなった。

 そんな時流の中、台湾野球のレベルアップが渉外担当者たちの目を引いた。

 前回のWBC予選では日本を苦しめ、21Uワールドカップでは母国開催で見事に初代王者に輝いた。野球熱は高く、街を行けば母国の英雄である王建民や、中日にも在籍し、オリオールズで活躍するチェンのTシャツをあちこちで見かける。陽岱鋼が在籍する日本ハム戦は全戦を生中継。これだけではない。スポーツ専門チャンネルはMLB、NPB、CPBLだけでなく、大学野球、中学野球も大会前から特集番組を流すほど野球文化が根付いている。

 今季、台湾の統一ライオンズでコーチを務めた立石充男氏は台湾野球のレベルについて「以前の6球団から4球団と少なくしたことで、レベルは上がっている。日本のレベルに近づきつつはある」と説明する。

 年俸も安く、実力も上昇中とあれば、渉外担当が放っておくわけがない。来年も各球団の台湾調査は増えそうだ。

(デイリースポーツ・達野淳司)

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