セスノック市も期待する日本代表の活躍
おそらく、このイベントがなければ、その街の名前を知らないまま日常を過ごしていく日本人が大多数であっただろう。
“その街”とは、オーストラリア南東部、ニューサウスウェールズ州のセスノック市のことだ。現在、アジア杯に臨むサッカー日本代表が直前合宿を張るこの地は、初戦が行われるニューカッスルから西へ車で1時間半ほどの距離で、シドニーからは同じく車で北西へ2時間半ほどかかるのだが、これらの情報だけでその場所がわかる人は少ないのではないか。
セスノックを含めた「ハンターバレー」と呼ばれる地域は、オーストラリア国内ではとても有名なワインの産地で、豊かな自然の中に著名なワイナリーも多い。
そんな街が、日本代表がキャンプを行っていることで、にわかに活気づいている。もちろんそれはあくまで日本人的な感覚も多分に含まれているのだが、練習場には日々、多くの人が集まりにぎわっていることは事実だ。
その内訳は在オーストラリアの邦人はもちろん、地元や近隣の都市から来た住民、中には日本から駆けつけたサポーターと実に多彩。4日に行われたオークランド・シティー(ニュージーランド)との練習試合では、メーンスタンドしかない小さなスタジアムが満員。小さな売店に長蛇の列ができ、ゴール裏やバック側の芝生にも多くの観客が陣取り、日本代表のプレーに声援を送っていた。
「偉大なスター軍団を写真に納めるチャンス」-。地元のニューカッスル・ヘラルド紙は1面で、前回のアジア王者のキャンプ地来訪をこんな見出しと共に伝え、ファンサービスを行う代表チームの写真を掲載した。他の記事では「(移籍市場価値は)200億円超」とつづられ、それはまるで日本開催時のクラブW杯で、世界的強豪クラブが来日した時のような盛り上がりぶりだ。
自治体も協力的だ。前述の同紙によれば、セスノック市は代表の6日間のキャンプに、練習場の整備代や人件費などを合わせて「およそ300万円をかけて用意をした」という。練習場で働くスタッフも「日本に頑張って欲しい」と、代表の活躍を期待する。
そんな人々が手入れした練習場の芝生の状態について、FW本田圭佑も「このピッチならば言い訳はできない」と語り、アギーレ監督も「セスノック市の方々の協力に感謝したい」とコメントするなど、直前合宿の進ちょく状況は順調の様子だ。
前回王者として、タイトルを守る大会となる今回のアジア杯。終了間際に逆転勝ちした準々決勝のカタール戦、PK戦の末に決勝進出となった準決勝の韓国戦、そして延長戦の末に栄冠をつかんだオーストラリアとの決勝戦-。そんな前回大会を知る選手たちは「アジアはそんなに甘くはない」と口をそろえる。
小さな街、セスノックからスタートした5度目のアジア王者を目指す大会。31日の決勝戦を日本が制した時、セスノックの街も大きな歓喜に包まれるかもしれない。もちろん、決勝の相手が開催国・オーストラリアでなければの話だが。
(デイリースポーツ・松落大樹)
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