バラエティー資質を開花させた木村佳乃
今年の正月、一人の美人女優がお茶の間の度肝を抜いた。木村佳乃(38)。数々のドラマ・映画に主演し、気品ある魅力をふりまき、私生活では少年隊・東山紀之の妻にして、二児のママでもある。
芸能界に確固たる地位を築いた木村は、1月4日放送の日本テレビ「世界の果てまでイッテQ!新春2時間スペシャル」に出演。なぜか森三中、タンポポ川村、いとうあさこらとオーストラリアへ「天国地獄ツアー」に出かけたのだ。
そこで木村は、浜辺で相撲を取るわ、蛾を食べるわ、バンジージャンプで絶叫するわ、肉体派女芸人とガップリ四つの大奮闘。ほっかむりに水着で泥水熱湯温泉と対峙(たいじ)し「押さないでくださいよ」と注意しつつ、顔面から突き落とされる“お約束”までやってのけた。
ネット上では「爆笑!」「好感度が上がった!」「かわいい!」と絶賛の嵐だった。日本テレビに聞くと、木村が同番組のファンと聞いて、ダメ元でオファーしたら、まさかの快諾だったという。
視聴者は「なぜ木村が?」とビックリだったかもしれないが、木村を何度か取材した経験からすると、さもありなん。ノリがよく、気さくで、空気を読んで気遣いもできる木村の性格に、度々触れたことがある。特に印象に残った例を紹介したい。
07年、木村は花魁(おいらん)の人間模様を描いた映画「さくらん」に出演した。その完成披露試写会でのこと。質疑応答で記者は木村に「花魁は現代なら水商売や風俗に当たるが、そういうところに通う男性をどう思う?」と質問した。
決して品のいい質問とは言えないが、答える側の“気の利いた返し”に期待したつもりだった。しかし、司会者が勝手に「それはプライベートな質問。答えられません」と突っぱねてしまった。後で「どこがプライベート?」と抗議したが、後の祭り。後味が悪い会見となった。
それから約10日後。所属事務所の懇親会が都内レストランで開かれ、木村と席を共にすることになった。和やかな歓談の中で、木村が思い出したように、先述の会見の話を切り出した。
「全然プライベートの話じゃないのに、変な気を遣い過ぎだよね。むしろ、私は花魁については勉強したから、花魁と風俗は違うという話をしたかったのに…」
残念そうな表情で、花魁の時代背景や社会的意味を説明してくれた。「実は…」と記者が質問したことを告げると「えっ、そうだったの。気を悪くされましたよね。ごめんなさい」と、頭を下げられ、こちらは恐縮するばかりだった。
今回の「イッテQ」出演は「女優として幅を広げたい」という木村の思いで実現したそうだが、誰に対してもお高くとまらず、空気を読んで機転が利くというバラエティー向きの資質を、見事に開花させてしまった。
2015年、木村佳乃がバラエティー界を席巻するかもしれない。(デイリースポーツ・杉村峰達)