燕の補強は「うまい、やすい、はやい」
「うまい、やすい、はやい」と言えば、某牛丼チェーンのコンセプト。今オフの補強で狙いの選手を次々と獲得したヤクルトの手際の良さを見ていて、この言葉が頭に浮かんだ。
まずは、ロッテから成瀬善久投手、日本ハムから大引啓次内野手を獲得したFA戦線。今オフは、FA選手で最大の大物だったオリックス・金子や、中日・山井らの動向が読めず、興味を示した多くの球団が手をこまねいた。ヤクルトも興味を示していたが、早々と見切りをつけて成瀬と大引に注力。「はやい」が決め手となって、球団史上初のFA2選手獲得につなげた。
次は、昨年末に発表された前レッズの新外国人ローガン・オンドルセク投手の獲得。当初は広島を退団したバリントン、ミコライオらにも興味を示したが、バリントンはオリックス、ミコライオは楽天が獲得に動き、マネーゲームを避けて撤退した。
そんな中、オンドルセクが自由契約になるかもしれないとの情報をキャッチし、昨年12月上旬に公示されると即オファー。大リーグ球団も興味を示していたが、粘り強い交渉を続けて契約に結びつけた。
5年連続40試合以上登板している現役大リーガーだが、年俸は1億5000万円プラス出来高と、オリックス入りしたバリントン、楽天入りしたミコライオと同程度。ここでは「はやい」に加えて、「やすい」の言葉が浮かぶ。
最後は、FAで巨人へ移籍した相川の人的補償だ。昨季は12球団ワーストの防御率を記録。積極的に投手補強を進めていたため、ここでも投手の獲得が予想されていたが、フタを開けてみれば、将来を嘱望される2年目の19歳、奥村展征内野手を獲得。そこに至るまでの駆け引きは巧妙だった。
巨人から自由契約となった捕手・井野の獲得が布石となっている。巨人側に悟られないように水面下で動き、プロテクト選手のリストが届くのを待って発表。事前に井野の獲得を知られると、巨人は捕手の獲得はないと見込んで捕手をプロテクトから外し、その枠を奥村に回していたかもしれないからだ。松井編成部長が「ウチは若い内野手の補強も課題だった」と話したように、実は奥村は狙っていた選手の1人。ここでは「うまい」が光った。
振り返れば、完璧とも言える今オフのヤクルトの補強。ある関係者は「補強で連戦連勝だったオリックスに(成瀬、大引獲りで)連勝した。これが一番気持ちいい」と笑みを浮かべた。
だが、松井編成部長が「(採点は)シーズンを見てからにしようか」と話すように、補強は結果を出して初めて成功と言える。「うまい、やすい、はやい」は「つよい」となるだろうか。
(デイリースポーツ・洪 経人)