高まる黒田熱、勝利数予想には配慮も

 米大リーグから8年ぶりに広島復帰を決断した黒田博樹投手の注目度は、一向に衰える気配がない。広島の大型書店には必ずカープ関連本コーナーがあるのだが、黒田を扱った過去の書籍は、そのコーナーだけでなく、入り口付近で、新刊本とともに平積みされていることも多い。

 昨年末に復帰が決まった際は、広島市内のデパートで「おかえりなさい!黒田投手!」と垂れ幕がかけられた。全国的にも注目を集めているが、地元での盛り上がりはそれを上回るものがある。

 現役バリバリの先発ローテ右腕。大リーグに残留すれば年俸20億円超も夢ではなかった。昨年はヤンキースで11勝9敗、防御率3・71。昨季年俸は1600万ドル(約18億9000万円)で、年俸4億円プラス出来高で復帰ということは、実質的には15億円程度の減俸ともいえる。復帰理由を「ファンへの使命感」としたことで、さらに地元の熱気が増している状況だ。

 一方で、その熱気に神経質になっているのが球団だ。

 ファン目線では「10勝は確実。15勝もいける」などと浮かれているのだが、球団幹部は「本人にできるだけプレッシャーをかけたくない。勝利数を予想するようなことはしない。マスコミもあまり10勝だ、15勝だ、などとは取り上げないでほしい」と話している。

 緒方監督も黒田復帰を「精神的な支柱になるのは間違いない」としながらも、「本人は相当の覚悟を持っている。プレッシャーをかけることはしたくない。数字を出して期待するようなことはしない」と述べている。

 球団には取材申し込みが殺到しているという。カープに合流予定の沖縄2次キャンプでは、黒田の専属広報を1人配置することが決まっている。しかし、会見や囲み取材を除き、インタビューなどの個別取材は全て断ることが検討されている。球団幹部は「練習に集中させたい」と話している。

 黒田のグッズ展開についても、レプリカユニホームなど通常のものは販売される予定だが、例えば「男気Tシャツ」「おかえりなさいTシャツ」などの派生グッズについては、現時点では販売されるかどうか、公にされていない。多彩なグッズ展開で定評があるカープだが、この点についても球団幹部は「そういう商品をつくることで、黒田にプレッシャーをかけたくない」と説明した。

 黒田は1月に米ロサンゼルスで自主トレを公開した際、2桁勝利を最低限のノルマとし「シーズンを終えてどう感じるか分からないが、それができなければ自分の中で区切りをつけないといけないと思う」と言及。2桁できなければ引退、ともとれる覚悟を示した。

 球団側の配慮。そして黒田の覚悟の大きさ。互いに互いを尊重しあっていることが十分に感じ取れた。何にせよ、24年ぶりの優勝への盛り上がりが、1月にして日に日に高まっていることだけは間違いない。(デイリースポーツ・山本鋼平)

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