競泳界のキングが示した悲壮な覚悟
競泳のアテネ、北京五輪平泳ぎ2大会連続2冠の北島康介(32)=日本コカ・コーラ=が、悲壮な覚悟で2015年シーズンに臨む。今年初レースとなった東京都新春水泳大会後、2月に約5年ぶりとなる高地合宿を行うことを表明。「今年は高地トレをしようと思う。死ぬか生きるかでしょう。そういう気持ちでいかないといけない」と、今季に懸ける決意を打ち明けた。
場所は標高約2100メートルの米・フラッグスタッフ。北島にとっては、08年北京五輪前以来の訪問となる。昨年、休養シーズン以外では初めて国際大会代表から漏れた32歳は、今年を「最後のチャンス」と位置づけた。
世界選手権出場には、4月の日本選手権で2位以内に入ることが条件。「正直、死ぬほど出たいとかいうわけじゃない」と前置きした上で「少しでも全盛期の泳ぎを取り戻せたら。自分にどれだけ可能性があるのか挑戦したい」と、高地合宿解禁の理由を説明した。
今や日本のエースに成長した萩野公介や瀬戸大也ら、若手の成長が著しい競泳界。ただ、そんな彼らの存在に触発されたわけではないという。「人からもらう影響は、今はもう本当にない。昔だったら、(米国の)ハンセンが世界記録を出したからとかあったけど。今は自分の可能性を見出したいだけ」。あくまでスイマー北島康介として、競技者としてのピークを過ぎた中で、どれだけ限界に挑めるかの挑戦だ。
「(100メートルを)58秒で泳げるかといえば、正直、泳げないと思う。でも去年の1分00秒台から、59秒では泳ぎたい。そこに可能性があるなら、辛抱してトライしたい」。何度も口にした「可能性」の3文字に思いの強さが表れた。
30歳を超えて、身体に大きな負荷の掛かる高地合宿は、大きな賭けになる。「体もやっていけば痛いところも出てくる。ケガしたら終わりだと思ってね。その時は終わりだよ」と北島節で冗談めかしながらも、言葉の節々に覚悟がにじんだ。
(デイリースポーツ・大上謙吾)