広島・一岡が語るFA人的補償の是非

 巨人にFA移籍した相川亮二捕手(38)の人的補償で、奥村展征内野手(19)がヤクルトに入団した。まだ2年目。制度とはいえドラフトで指名され、たった1年でチームを離れる。その賛否を巡っては育成放棄など、世間でも論争になった。

 「去年、自分が獲られてまだ2年目なのに…と言われて。ある程度(その壁が)崩れたのかな、と思っていたんですけどね」

 ちょうど1年前。奥村と同じように、野球人生の分岐点に立たされた男がいた。一岡竜司-。巨人にFA移籍した大竹寛投手の人的補償で、広島に移籍することが決まった。プロ2年目を終えたオフ。プエルトリコのウインター・リーグへ派遣され、飛躍を誓っていた矢先のことだった。

 「大竹さんがFAだとプエルトリコで知って、人的は誰になるのかな…と。指名されるまでは行きたいなじゃないですけど、行けばチャンスはあるかなと、思っていました」

 奥村の話題を振ると、一岡は昨日のことのように振り返った。「でもいざ指名されたら、まさか2年終わって指名されるとは、思ってなかったので。広島のことも知らない。頭は真っ白になりました」。球団からその通告を受けた夜は、現実を受け止められずに涙を流したという。だが、一方で新天地への期待、希望も感じていた。

 プロの壁は厚かった。一岡が争ったリリーフには山口、西村、マシソンら、タイトルホルダーがいた。「このままジャイアンツにいても、チャンスをつかめるかどうか不安だった。あの時はその自信もなかったので」。通告の翌日、球団にあいさつへ向かうと、担当スカウトや球団関係者から、謝罪を受けた。その言葉がうれしかった。力にもなった。

 「必ずしも活躍できるかは分からない。でも、トレードとは違って、相手球団が指名して、欲しがってる選手を引き抜いてくれている。チャンスをつかめる、つかめないは別にして、増えるとは思う。移籍って絶対に付きものだし、自分が良かったからかも知れないですけど、僕は良かったなと思います」

 迎えた2014年。一岡は新天地で躍動した。開幕1軍を勝ち取ると、4月27日の巨人戦でプロ初勝利。「あり得ないステップアップをさせてもらった」と、オールスターにも初出場するなど、立たされた逆境を力に変えた。「人的補償」が、一岡の人生を変えた。

 元々、ドラフト3位で指名された逸材。必要だったのは、発想の転換だったという。「ジャイアンツに入ったということから、プロ野球に入ったんだと、考え方を変えればいいと思うんです」。戦う場所が違っても、野球をすることに変わりはない。1軍の舞台で輝くために汗を流す。

 人的補償は是か、それもと非か。それは分からない。答えはないのかも知れない。だが、この世界は自分次第で、進む道を切り開くことができる。

 「(奥村は)絶対にヤクルトが欲しいんだと、指名して獲ったわけですし、プラスに思って欲しい。いま思えば…ですけど、僕は広島に来て、良かったなと思いますからね」

 一岡は屈託のない笑顔で笑った。

(デイリースポーツ・田中政行)

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