FA移籍のオリックス・小谷野の適応力
大型補強したオリックスのキャンプで、34歳にして新加入したベテラン・小谷野栄一内野手の適応力は特に目を引く。
オフに日本ハムからFA移籍。新天地でのキャンプを迎えるにあたり「内外野、どこを守れと言われても大丈夫なように、守備練習を徹底してきた」とオールラウンダーを宣言した。
昨年12月から今年1月にかけて東京都内から愛媛県、さらに沖縄県へと場所を移し、自主トレを積んだ。「昨年はケガで出場機会が少なくなった。三塁を守ることがあまりなかったので、ノックを受けまくってきた」と、準備は万端にして臨んだ。
キャンプに持参したグラブは、実に9個。「キャッチャーミットもあるし、もともと使っている(内野手用の)グラブも、外野手用に近いくらい大きいですからね」と、いくつもの“手”を使ってレギュラー取りに挑む。
森脇監督は「ゲームの中で、幅広く役割を持たせられる選手」と期待を寄せる。「小谷野を二塁、中島(裕之内野手)を遊撃というオーダーもいけるんじゃないか」と思考を巡らせている。小谷野も「一塁も外野も二遊間も、言われれば挑戦する」と謙虚に構える。
実際、FA加入の2人ですら定位置が約束されている状況ではない。内野は超激戦。A組(1軍)キャンプにいる昨年のレギュラーは安達、ヘルマン。さらに原拓や小島、若手の台頭株・堤も虎視眈々(たんたん)と機会を狙う。
一塁手要員のブランコ、T-岡田らとの兼ね合いも含め、守備位置の組み合わせは無限にある。さらには沖縄・宮古島キャンプのB組(2軍)では平野恵、縞田らが開幕へ向けてじっくりと調整している。若手もベテランも、必死でなければならない環境だ。
小谷野にはもう一つ、勝負強い打撃という武器もある。打撃練習では左打席で打ってみたり、マシンの球をカットするように軽くはじき返したりなど、工夫を凝らしている。
「肘をうまく使ってボールをさばく。ボールの内側をたたくようなイメージです。打撃ポイントに奥行きができる」と経験を生かした調整法だ。
昨年のCSファーストSではオリックスを相手に3試合で打率5割、2打点をマーク。チームにとって“もっとも嫌な敵”が味方に変身した。攻撃力アップ以外にも、チームの弱点を客観的な視点で分析できるなど、さまざまなメリットにつながるだろう。
糸井や原拓ら旧知の選手は多く、早くもチームに溶け込んでいる。宮崎キャンプは、活気と競争による熱い日々が続いている。
(デイリースポーツ・中野裕美子)