大谷翔平が初めて味わう開幕投手の重圧
2月20日。日本ハム・大谷翔平投手が、栗山監督から開幕投手に指名された。昨季挙げたチームトップ11勝の実績からして任せてもおかしくないとはいえ、高校を出て入団してからわずか3年。まだ20歳の右腕に重くのし掛かる重圧。栗山監督が大役を託したわけは。大谷は大きなプレッシャーをはねのけ、開幕勝利を手にすることができるか。
チームの船出。一歩目を踏み出す開幕戦。ただの一戦ではない。スタートダッシュの鍵を握る大事な初戦でもある。その大役を務める大谷は「伝えられた時はうれしかったです。初戦を取るかどうかはすごく大事なので、責任を持ってマウンドに立ちたい」と決意を述べた。
初めて体験する重圧になる。直々に開幕投手を伝えられ、意気に感じているようだが、その後の言動を見る限り、重荷を背負い過ぎているようにも思えた。3週間後の開幕戦に向けて、順調に調整は進んでいけるのか。
3日の巨人戦。開幕戦を想定し、力が入りすぎているようにも見えた。去年にはあまり見たことがなかったような、大谷らしくない投球だった。開幕戦に向けての調整を意識し過ぎたのか、4回を4安打4失点。最速は153キロ。調整段階とはいえ、直球は140キロ台後半のらしくない球速だった。制球も6四球と乱し、甘い球を痛打された。
相手が強いほど燃える大谷翔平。楽しみにしていた巨人打線との対決も、「相手を見る余裕はなかった」と相手打線と対戦する以前の問題と振り返った。フォームは安定せず、納得のいくボールを投げられなかった。これが、開幕投手の重圧?自分にプレッシャーをかけすぎているのか。マウンドの姿はそうも思えた。
二刀流を務めながらも、今年は中心投手としても活躍を求められている。栗山監督は「今年は正々堂々と勝負する。エース同士の戦いで、5分以上の確率で勝って欲しい。必ず突破してくれると信じている」と重圧をかけている。
最速162キロ。能力からしてそれくらいの圧力をかけていいかもしれないが、去年初めて11勝を挙げた投手。投球への重荷になる。それも承知の上で栗山監督の中には、重圧を乗り越えて日本のエースへと成長して欲しいという願いがあるようだ。
栗山監督は開幕投手を伝えた直後に「日本のエースをつくるというところでね。(大谷には)全然、違うところを求めている」とも言った。開幕戦に投げる投手は各球団のエース級との対戦が多くなる。楽天・則本、オリックス・金子、西武・岸らとの投げ合いで何を感じ、何を得るか。ロースコアの投げ合いの中で、勝ち星を伸ばすことも容易でない中、苦しんだ経験は成長段階の大谷の大きな財産となる。
監督就任後、開幕戦は全勝中の栗山監督は「こっちはまだ開幕戦、負けてないんだからね。頼むよ」と言いながらも「勝ち負けはどうでもいいけど」と、あえて大谷にプレッシャーをかけないようにも発言した。
チーム一の勝ち頭への大きな期待もしているが、高卒3年目の右腕に全責任をかぶせるようなことをする気はない。「負けたら俺の責任なんだから」「(経験して)何倍も成長していってほしい」
全力で投げて負けたら致し方なしと覚悟はしている。開幕投手は将来の球界を背負うエースになるための過程。あえて重圧をかけた中で得た経験は、日本のエースへの階段を上がる一歩でもある。
(デイリースポーツ・水足丈夫)
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