1枚の写真から見る川崎・大久保の神髄

 まずは、この写真をご覧いただきたい。7日のJ1開幕戦・横浜M対川崎の前半22分、川崎・小林悠が決勝点となるゴールをたたき込んだ場面である。

 この瞬間、小林の足元からは既にボールが離れており、フォロースルーに入っている。また、後ほどハイライト動画で確認したところ、エウシーニョから絶好のアシストがフリーの小林に入った段階で、両チームイレブンのほとんど全員の足が止まっていた。後述する彼だけを除いては-。

 この写真は小林のシュートを10枚連写した際の、6枚目のコマである。4枚目あたりからある人物が登場する。結果的にそうはならなかったが、途中からピントを間違えそうなほどの素早い動きだった。脱兎のごとく猛スピードで画角の右側から走り込んでくる男。それが大久保嘉人。2年連続のJリーグ得点王だ。

 得点を稼ぐことが重要な仕事の1つであるFWとしては、当たり前のことかもしれない。だが、横浜Mの榎本も一流のGK。もしも小林のシュートがはじかれていたら、唯一動きを止めなかった大久保の判断が奏功したはずだ。後半27分、大久保はダメ押しとなる3点目のゴールを決めたが、その布石がこのシーンにあった。当たり前のことを当たり前にできるプロ意識。愚直なまでにゴールを狙う闘志と積極性。これこそが大久保嘉人の神髄ではないだろうか。

 後半ロスタイム、大久保は判定を巡り猛抗議。イエローカードを食らった。決して肯定されるべきものではないが、試合の大勢が決した終了間際でも、最後まで闘志が衰えなかったことの証左だ。

 日本人では95年の福田雅博(浦和)、98年の中山雅史(磐田)に次ぐJリーグ史上3人目となる年間30得点へ、そして前人未到の3年連続Jリーグ得点王へ。今年も大久保には注目だ。

(デイリースポーツ写真担当・北野将市)

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