服部海斗さんと兄との最後の会話とは

 記者として最もつらい取材だった。17歳のプロボクサー・服部海斗さんが慢性骨髄性白血病のため2月24日に死去した。早過ぎる別れ-。通夜、葬儀は見ていられない程、悲痛だった。

 U-15全国大会で優勝するなど将来を嘱望された。17歳未満は国内のリングに立てない規則のため16歳時の13年12月に海外でプロデビューして引き分け。プロ初勝利を期した2戦目の直前、昨年3月に病気は発覚した。

 昨夏、父・兼司(けんじ)さんの骨髄を移植する手術を受けるなど一時は回復傾向にあったが再発。年明けから容体が悪化し、帰らぬ人となった。

 海斗さんの兄・力斗(20)も現在、父の故郷・熊本でプロボクサー。弟の容体が安定すれば、自らの骨髄を移植する予定だったが、再手術が行われることはなかった。

 年明け、大阪に駆け付け、骨髄を抜く手術を受けた。予定していた成人式はもちろんキャンセル。病室に弟を見舞うと「ごめんな、成人式に出られなくて」と謝られた。

 「成人式なんかどうだっていいのに。あいつは自分のことより、そんなことを気にするやつやった」。生意気で兄弟ゲンカをたくさんした。しかし最後はいつも兄貴を立てた優しい弟を思い返した。

 最後の会話は2月15日だった。失っていた意識が1週間ぶりに回復。病室に行くと手を差し出され、「握って」と言われた。手を握ると「きつかった」と弟は号泣した。1年に及ぶ闘病中、初めて見せた涙だった。

 激痛の抗がん剤治療にも「リングに戻る」ことを信じ耐えた。父も所属ジムの丸元大成会長も「弱音を吐いたことは1度もない」と口をそろえた。それでも、もはや、がんの進行は止められないことを悟っていただろう。死を間近にした時、抑え込んできた恐怖や悲しみは兄の前であふれ出した。その後、再び昏睡状態に陥った海斗さんの意識は戻ることはなかった。

 葬儀では棺に顔をうずめ最後まで泣き続けた力斗。丸元会長によれば、弟の遺志を継ぎ、大成ジムへの移籍が決まった。海外でともにプロデビューした同僚で親友のWBAアジアミニマム級王者・加納陸(17)とともに6月7日、兵庫県三田市で行う同ジム主催「服部海斗追悼興行」に出場する予定だ。

(デイリースポーツ・荒木 司)

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