村田への2軍通達に見える原監督の思い
これだけの決断ができるのは、12球団を見渡しても巨人・原監督だけだろう。12日のソフトバンク戦後、指揮官は不振の村田に対して2軍での再調整を通達した。通算309本塁打で、球界を代表するスラッガー。三塁の守備にも定評があり、本来なら開幕スタメンの座を確約されていても不思議ではない。
だが、指揮官はオフに「チームを解体する」と宣言していた通り、一切の妥協は許さなかった。この決断力が常にチームに緊張感を与え、勝ち続ける原動力になっていることは間違いないだろう。
村田の2軍行きに関して、予兆はあった。2月下旬、原監督は調子の上がらない村田に対して「バットが振れていない。修正できるまでスタート(先発)はないよ」と通達。3月に入っても数字が上がらないと、「1割バッターじゃ、話にならない」と切り捨てた。
村田からすれば、現在は開幕にピークを合わせるための調整段階。そんな思いもあったかもしれない。だが、原監督はその気持ちを見透かしたように「開幕したら打てる。そう考えているとしたら、痛い目にあう。そんな簡単じゃない」と、首を横に振っていた。
ただ、原監督も村田を見捨てたわけではない。かつて、横浜(現DeNA)の主砲だった村田の獲得を熱望したのは、誰より原監督。13年オフ、外様では初めて選手会長を託すほど信頼も寄せている。“荒療治”で何とか復調して欲しいという思いだろう。
ほかの選手に刺激を与える狙いもありそうだ。村田に2軍行きを命じた翌13日、原監督は休養日だったチームの予定を変更。野手陣をジャイアンツ球場に集め、徹底的に打ち込みを行った。練習中には、中井や藤村に対して打撃指導を行うと同時に「今はチャンスなんだぞ」とゲキも飛ばした。
今年のように“主力不在”だった08年の開幕前。オープン戦11試合目にして、チーム待望の第1号を放ったのが当時は高卒2年目の坂本だった。アピールを重ね、開幕スタメンの座を奪取。そこから、一気にスターへの階段を駆け上がった。
坂本のように飛び出してくる選手に期待しながら、なかなか思い通りにいかない現実。開幕4番候補にも挙がった大田は左大腿(だいたい)二頭筋の肉離れで離脱。中井や橋本、藤村などの若手や中堅の選手たちも、レギュラーを奪うまでには伸びてきていない。
チャンスを逃してしまえば、あっという間に埋もれていってしまうのがプロの世界だ。「時間は誰にでも平等。未来は平等にあるんだよ」。原監督の“親心”にこたえることができるのは若手か、それとも村田か。開幕までの残り期間は、それぞれの運命を変える貴重な時間となるかもしれない。
(デイリースポーツ・佐藤啓)
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