“左キラー”イチロー対左腕の代打は?
「野球のセオリーでは…」。
記者がマーリンズのレドモンド監督にこう切り出したのは20日(日本時間21日)、アストロズとのオープン戦の試合後だ。
「左打者は左投手に不利と言われていますが、たとえば、左打ちのイチローは左腕にとても強い。もし代打を必要とする状況で相手が左投手だった場合、オプションとしてイチローの可能性はありますか?」
新天地のマーリンズでは“第4外野手”としての役割を期待されているイチロー。マーリンズは指名打者制のないナ・リーグに所属するため、代打での途中出場が増えることが予想される。今キャンプでも指揮官は幾度となく「代打・イチロー」の話をしてきている。
記者がこの質問をぶつけたのには理由がある。
イチローのメジャー14年間の対左腕の打率は・330。シーズン別では、2001年が・318、02年・356、03年・359、04年・404、05年・352、06年・352、07年・331、08年・288、09年・339、10年・309、11年・281、12年・284、13年・321、そして、昨季が・333。3割以下のシーズンは3度あるが、いずれも2割8分台の高い数字を残している。
左投手を苦にしないイチロー。純粋に監督の考えを聞きたかった。
レドモンド監督は「イチローが左投手に高い数字を残していることは知っている」と前置きしながら「でもイチローを代打で使うことはないだろうね。やはり右投手の時になりますね」。そして「ただし、相手ベンチが右から左へスイッチしてきてもイチローを代えることはしない。代打の代打は絶対にない。イチローは相手が右でも左でも関係なくヒットが打てるから」と続けた。
24日のレッドソックス戦。スタメンを外れたイチローは代打要員としてベンチで待機した。唯一、代打が使われたのは八回無死一、二塁の場面。レドモンド監督は中継ぎ左腕のイブランドに対し、右打ちのサイズモアを打席に送った。
試合後の取材の囲みが解けた後、指揮官が記者の方へ歩み寄り、こう言った。「イチローは準備万端だった。右投手ならもちろん、行かせていたが、今日の相手は左だった。彼はいつでも行ける準備をしていたよ」。4日前の答えを実証する采配だった。
「セオリーは壊してなんぼ」。
記者がイチローから聞いた好きな言葉の一つだ。
野球はチームスポーツ。チームには対左腕の代打として待機する選手がいる。それらのことは十分に理解している。しかし、絶好機に左投手に対して「代打・イチロー」がコールされないことを物足りなく思うのは記者だけではないだろう。
(デイリースポーツ・小林信行)
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