甲子園を勝ち抜くキーワードは「時間」

 経験の差が如実に表れている今春のセンバツ。ベスト8の顔ぶれを見ると、大阪桐蔭、浦和学院、常総学院が平成以降に優勝を果たしている。敦賀気比、県岐阜商、健大高崎も3年以内に8強以上に進出しており、東海大四、静岡は昨夏の経験者がメンバーに残る。

 そんな常連校から聞こえてきた、甲子園を勝ち抜くキーワード。それは“時間”だ。常総学院の入江部長は「甲子園はあっという間に時間が過ぎてしまう。その準備もしてきました」と甲子園練習で明かしていた。浦和学院の森監督は「甲子園では早め早めに準備していかないといけない」と言う。

 大阪桐蔭・西谷監督も「朝の第1試合では朝起きて、宿舎でアップしてから球場に入る。すぐ(ブルペンで)打てるように。時間がもったいないので」と、培ってきたルーティーンを明かした。それほど甲子園常連校が意識する時間とは-。厳密に定められたスケジュールにある。

 朝の第1試合は開始2時間前に球場入り。双方の室内練習場で待機し、1時間半前から10分間、報道陣の取材時間が設けられる。そこから練習して、グラウンドに移動し7分間のシートノック。第1試合のプレーボールがかかる前に第2試合を行う両チームが室内練習場に入り、取材、練習と同じ行程を過ごす。

 第1試合終了と同時に室内練習場を出て外野でキャッチボール。ベンチを入れ替わる最中には、すでにグラウンドでシートノックが始まっている。第1試合と第2試合の間隔は約30分。スムーズな試合運営を行うために、スタッフがテキパキと指示を飛ばし、選手たちはおのずと急ぎ足で試合の準備を進めることが求められる。

 甲子園での経験が少ない学校は、なかなかこのスピードについていけない。心の準備、体の準備が整わないままゲームに入ることで「自分たちの野球ができなかった」と試合後に語る球児は多い。

 もちろん時間だけでなく、甲子園は他の地方球場と比較しても作りが特殊。一般的な球場で外野手が守備位置を確認する際、ポールとフェンスを基準にするが、甲子園はポールからさらに奥までフィールドが伸びている。そこで“錯覚”が起き、長打警戒の場面でも両翼の選手が頭上を越されるケースが目立つ。

 「甲子園では自然と外野手が前に出てしまう傾向がある」と語ったのは常連校の指導者。戦う以前の段階で、その事実を把握しているか否か-。今年のセンバツを見ていると、その差が如実に表れているようにも感じる。

(デイリースポーツ・重松健三)

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