高倉健が愛した「不器用」なボクサー
4月8日、後楽園ホールで行われたスーパーウエルター級8回戦で、コブラ諏訪(34)=ピューマ渡久地=がタイ人ボクサーに判定勝ちを収めた。プロ14年目、通算15勝目(11敗1分)となる勝利には、こみ上げるある感慨があった。
脳裏に浮かんだのは、ジムの片隅で自分のスパーリングを見てくれていた故・高倉健さんの姿だ。「プロになる前から何度か見ていただきました。その存在感の重みにとても緊張したことを覚えています」と言う。コブラにとって、高倉さんが亡くなって初めての試合だった。
昨年11月10日、83歳で亡くなった名優、高倉健さんはボクシングが好きだった。若い頃は東京・麻布にあった「十番TYジム」にお忍びで足を運んだ。その後、所属していたピューマ渡久地(元日本フライ級王者、現名誉会長)と知り合った。
現役引退した渡久地が01年に東京・東麻布にジムを立ち上げた際には、「夢」の文字を入れた鏡を贈った。時々立ち寄っては、選手の練習を静かにながめていた。そして、一番のお気に入りがコブラ諏訪だった。
渡久地会長は「不器用さを気に入ってくださって『ボクシングは技術の世界だけど、魂が揺さぶられるファイトが大事だね。コブラには熱いハートがある』と応援してくれました」と懐かしむ。
高倉さんは「自分は選手に物を言う立場じゃない。選手に言えるのは会長だけ」と、けじめを大事にしていたそうで、選手に直接アドバイスはしなかった。ある日、会長を通じて「不器用でもコツコツやることだよ。負けたら終わりじゃない、止めたら終わりなんだ」と伝えたという。
コブラ諏訪。1980年6月9日、東京・港区出身。身長174センチ、右ボクサーファイター。日本スーパーウエルター級9位-高倉健が愛した不器用なボクサーは、「タイトルを目指します」とあきらめずに、きょうもサンドバッグをたたいている。(ボクシング担当・津舟哲也)
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