苦戦予想を覆す巨人の“内なる競争”
もう少し、巨人は苦しい戦いが続くと思っていた。4月も残りあとわずか、ここまで26試合を終え、15勝11敗。気づけば、貯金生活を送っている(4月28日現在)。
苦戦を予想した理由としては、オープン戦を6連敗で終え、迎えたシーズンであること。そして何より、相次ぐ主力選手の離脱だ。
3月上旬に、内海が左前腕部の炎症で戦列を離れ、現在も2軍調整中。シーズンに入っても、正捕手候補だった相川が開幕直後に右太もも裏を肉離れさせ登録抹消されると、急きょ捕手に復帰した打線の要、阿部も18日に左太もも裏を肉離れさせて離脱。開幕から好調を続けていた亀井も下半身の張りで中旬からいなくなった。
非常事態を助けたのは、若い力。先発ローテでは、新人の高木勇(三菱重工名古屋)が5戦4勝の大活躍。2年目の19歳、田口もプロ初登板初先発を、初勝利で飾るなど期待に応えた。中継ぎではルーキーの戸根(日大)も頑張っている。野手では亀井の代役として上がってきた橋本が3番に定着して4割近い打率を残す働き。「新成」というスローガンを掲げた原巨人。文字通り、新しい力がチームを支えている。
26日、2軍戦のマウンドには、大竹の姿があった。敗戦投手となったが8回3失点。その前の登板だった18日は、9回1失点と結果を残した。「2軍に落ちた頃から比べたら、手応えは感じています」。再起に向け、必死にアピールの毎日を送っている。
先発ローテとして期待されながら、オープン戦期間中も振るわず、今季初登板となった1日の中日戦で三回途中4失点で降板。そのまま2軍落ちした。「感覚的な部分で、修正しようとしてもなかなか修正しきれなかった」。その間に高木勇、田口らが出てきた。
ローテの座を奪われた形。だが大竹は「力が無くて落ちたし、この世界はそれが当たり前。結果が全てですから」と現実を受け止めながら話した。
そういえば、内海が23日に実戦復帰登板をした際「もちろん焦りはあります」と話していた。巨人で経験と実績を十分に積んだ左腕でさえ、抱いている危機感。常に戻れる場所が確約されていないところに、層の厚さを感じた。同時に、各ポジションにサバイバルが起こり、それがチームを活性化させている。競争力も、巨人の強さの源だ。
内海同様、危機感は大竹も同様に持っていた。「呼んでもらえるためには、結果を出さないといけないと思ってます」。1軍に呼ばれることが当然の状況ではない。悲壮な決意と闘志が、その言葉から感じ取れた。
大竹のほか、西村、小山と、キャンプで先発ローテを争った顔ぶれも奮闘中だ。現状、6人で回している先発ローテーション。だが当然、1年間は回せない。誰かが欠けた時、そこに万全の状態で控える選手がいる。内なる競争が続いていく限り、まだまだ巨人は止まりそうにない。(デイリースポーツ・橋本雄一)