ロッテ田中が出直しへ取り組むべきもの
さすがの秀才右腕も、ショックを隠しきれなかった。このゴールデンウイークに1軍デビューを果たしたロッテのドラフト2位・田中英祐投手(22)=京大=は、プロの厚い厚いカベに跳ね返された。4月29日の西武戦では3回5失点。中1日で5月1日の日本ハム戦で救援登板したが、3回を4失点と打ち込まれた。今、2軍で再び出直しを図っている。
田中は3、4月にイースタン4試合に登板。2勝を挙げ防御率2・14と、ロッテの2軍投手陣の中では、その時点でトップクラスの成績を残していた。その数字が後押しとなり、早期のデビューが実現したが、挑んだ1軍の舞台はあまりに苦く、「まだまだやらなきゃいけないことがたくさんある。力のなさを痛感した」と、秀才右腕に新たな課題を与えた。
首脳陣は、今後も田中を先発として育てていく方針だ。指導にあたる川越2軍投手コーチは、苦いマウンドを経て再出発を図る右腕に、「早いうちから(1軍を)経験できたことは、英祐にとっても良かったと思う」と話す。現在、田中は、打撃投手を務めるなど調整しており、今月中旬以降に、2軍戦での先発に復帰する見込み。「まずは自分のピッチングができるように、しっかりしたものをつくらないといけない」と話した。
そのひとつにまず、投球時の体の開きがある。かねて田中自身も課題のひとつに挙げていたことだが、川越コーチは、「筋力がまだついていないから、体が開いてしまう。しっかり筋力がつけば、いい投げ方になっていく」。実戦マウンドを数多く踏むと同時に、並行して肉体の鍛錬にもこれまで以上に取り組んでいく。
「プロの世界だから、力がなければ、ああなってしまう。力をつけて、また1軍のマウンドに上がれるように頑張るということ。悲観することはない」と同コーチ。これまで勉強と両立してきた田中が、野球だけの生活になって、まだ2カ月。豊かな伸びしろを、確かな実力に変えていくことを期待した。
2軍降格を告げられた直後の田中は「1軍のマウンドはいい経験になったか」と問われると、約10秒ほど考え込み、「いい経験をしたとは言えないけど…」と視線を落とした。
だが、1軍の舞台、そしてその厳しさを身をもって体験したことは、決して無駄にはならないだろう。田中自身、今後、それを実感していくのではないか。この苦い思い出を糧にし、ここから這い上がれるか。未知の世界に飛び込んだ秀才右腕に、たくましくプロ野球人生を切り開いていってほしい、そう願う人は、少なくないはずだ。
(デイリースポーツ・福岡香奈)
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