“大波乱の使者”江田照男騎手の魅力
ヴィクトリアマイルで18番人気(単勝291・8倍)のミナレットを逃げて3着に導き、JRA史上2位の高配当・3連単2070万5810円(WIN5を除く)を演出した江田照男騎手(43)=美浦・フリー=。本人も直線入り口のところでは「勝てるかも」と思ったほどで見せ場たっぷりのレースぶりだった。残り100メートルで2頭に交わされ結果は3着だったが、思い切りのいい騎乗で競馬ファンに強烈なインパクトを与えた。同馬はそれまで重賞では前々走の福島牝馬S5着が最高着順だった。それが初のG1挑戦で見せ場たっぷりのレースを見せたのだ。
そのことについていろいろな話を聞いた。まず冒頭に「(自分が)何年ジョッキーをやっていると思っているの?初めて乗る馬だからといって、全く手探りな訳ではない」と一喝されてしまった。人気がある、なしに関わらずどんな馬でも勝利へ向けてひたむきな気持ちを持ち続け、しっかりと結果を出す-。私は素晴らしいジョッキーだとあらためて感じた。
前記のミナレットに対しては「切れる脚はないが、長くいい脚を使えるタイプ」とイメージし「それなら多少ペースが速くても、途中でペースを緩めず、一定のラップを刻み続けた方が頑張れると判断した」。その結果、大外枠から前半5F56秒9のハイペースで逃げる形となったが、最後まで自分の走りを貫いて3着に好走した。
江田照はこれまでにも98年の日経賞を12番人気(単勝355・7倍)のテンジンショウグンでV、そして00年のスプリンターズSを16番人気(単勝257・5倍)のダイタクヤマトでVと、たびたび大穴馬券を演出。調教や返し馬で騎乗馬の癖を瞬時につかむことに長(た)けており、その時に得た感覚や馬の力を信じてレースで強気に乗り、結果を出している。
先週のオークスではトーセンラークの追い切りに騎乗した後に「正攻法で2400メートルは厳しいが、策はある」とコメント。結果は15着だったが、前2走とは違う後方待機策に打って出た。
彼が乗る馬に対してはレース前から“何かしてくれるのではないか”とわくわくする。馬券を買う立場からしたら、常に意識する存在で“江田照の一発があるかも”と思いながらレースを見ているものだ。
ヴィクトリアマイルでの大万馬券演出はレース翌日のスポーツ紙などで取り上げられ、江田照男の名は競馬の初心者からベテランファンまで多くの人が目にしたことだろう。これからも味のある騎乗でアッといわせてもらいたい。そして競馬界をもっともっと盛り上げてもらいたいと思う。(デイリースポーツ・塩手智彦)