篠原信一 バラエティーで放つ心技体
バラエティー界に進出した篠原信一(42)の勢いが止まらない。シドニー五輪の柔道銀メダリストにして、元柔道男子日本代表監督。バラエティーからはほど遠いようにも見える経歴ながらテレビ番組に引っ張りだこのブレーク男が、8日に東京都内で行われたアニメ映画「ポケモン・ザ・ムービーXY 光輪(リング)の超魔神フーパ」(7月18日公開)」の公開アフレコでもあふれんばかりの魅力を放った。見えた武器は「意外性」と「謙虚さ」だろう。
声優初挑戦となる篠原は、同作でカバのポケモン・ヒポポタス役。だが、この日は、物語のキーマンとなるイケメンキャラ、バルザの声優を務めた藤原竜也(33)のセリフを奪う“暴走”を見せた。
わざわざ出番を待つ藤原をマイク前からどかせ、何をするのかと思えば、ドヤ顔で「メアリ、なぜお前が!?」とクールにバルザのセリフを決めた。公開アフレコはアニメ映画の宣伝としては恒例の行事。記者は何回も取材しているが、初めて見る光景だ。9年連続でポケモン映画の声優を担当している中川翔子(30)も「こんなの初めて。今年はカオスだ」と大爆笑。篠原は「監督、どうでした?」と悪びれた様子もなく、報道陣まで虜(とりこ)にした。
予定調和になりがちな会見を持ち前のサービス精神で盛り上げ、にもかかわらず進行には大きな支障を与えない。加えて「篠原ならしょうがない」といった空気まで生まれていた。
声優の山寺宏一(53)が「オリンピックを見て、大感動したんですけど、こんなふざけた人とは…。アスリートだった方が、今はバラエティータレントですよ」と目を丸くしたように、シドニー五輪でのイメージが大きな“フリ”になり、当時とのギャップが「意外性」として笑いに変わっている。
シドニー五輪では柔道男子100キロ超級決勝で“誤審”によって金メダルを逃し、表彰台で号泣。「審判も(相手の)ドゥイエも悪くない。すべて自分が弱いから負けた」との名言を残した。その潔い姿は、まさに「侍」。とてもバラエティーに出るようなイメージはなかった。一見こわもて風のビジュアルもあいまって、関西弁による軽妙なボケが意外性を生み、引き立つのだ。
さらに、ひょうひょうとしているよう見えて、門外漢の分野に対する取り組み方は実に真摯(しんし)で「謙虚」。映画では前述したようにポケモンの役とあって、セリフは「ヒポ?」がほとんどだった。
篠原は「うまく演じられるように練習して臨んだ」と冗談めかして話したが、湯山邦彦監督は「(篠原が)役作りをしてきて、いろんなバリエーションを持ってきてくれた」と証言している。
経験のない仕事でも全力で取り組み、自分なりの正解を探す。もちろん、役が合っていることもあって、篠原いわく「1回も監督に怒られていない。『そのままの篠原さんでやってください』と言われたので」とのことだが、仕事への向き合い方は、バラエティー番組に引っ張りだことなる要因の1つでもあるだろう。
昨年から芸能事務所と業務提携を結んでおり、バラエティーに対する本人の意欲的な部分も大きいはず。仕事に取り組む姿勢(心)、意外性たっぷりのボケ(技)、いい意味でのフリにもなる体格(体)を兼ね備えた、お笑い芸人ならぬ“お笑い柔道家”の勢いは、これからも続きそうだ。(デイリースポーツ・古宮正崇)