阪神・藤浪“3年目の覚醒”の要因とは
3年目を迎えた阪神・藤浪晋太郎投手の成長がめざましい。開幕直後の3、4月こそ、1勝2敗、防御率3・66と苦しんだが、5月に入ると、プロ初完封を含む2勝2敗、防御率0・88の月間成績をマークした。6月10日・ソフトバンク戦は7回5安打4失点。粘りの投球で4勝目をつかんだ。
覚醒した一番の要因は投球フォームが安定したことだ。開幕直後、フォームは横回転になっていたが、三塁から一塁への送球練習を繰り返すなど試行錯誤し、本来の縦回転ボールを取り戻した。中西投手コーチは「右腕のテイクバックが体の軸から離れなくなった」と説明。シュート回転のボールは減少し、球質が改善された。藤浪も「フォームのバランスが良くなった。しっかり上から叩けている」と手応えを口にする。
課題の対左打者についても、内角に直球、カットボールを投げきることで克服した。外角のボールゾーンからストライクゾーンに食い込むカットボール(バックドア)やツーシーム、フォークも効果を発揮。10日の試合でも、ソフトバンクは「藤浪対策」としてスタメン9人中、左5人を起用したが、5安打のうち左の安打は2本。これまでのようにシュート回転したボールを左方向へはじき返される場面はめっきり減少した。
中西コーチは配球も覚醒の要因に加える。鶴岡とバッテリーを組み始めた5月14日のヤクルト戦から、5試合負けなし。勝負どころでカーブを要求するなど、ベテランのリードが光る。藤浪も「おもしろい。鶴岡さんは球種も切り捨てない」と明かす。その日、精度の高くない球種を試合序盤から我慢強く要求することで、中盤から終盤にかけて、配球の幅は広がるという。
ここまで、12試合に登板し4勝4敗、防御率2・18。球数を減らしたことで投球回数は増加し、4完投、88三振はリーグトップだ。
オフに広島・前田から教わった「脱力投球」は徐々に実を結びつつある。藤浪の状態と比例するようにチームも右肩上がり。今後1人でどれだけ貯金をつくれるか-。セ・リーグ首位浮上へのカギは、若きエースが握っている。
(デイリースポーツ・杉原史恭)