TOKIO長瀬が“暴走”した理由

 TOKIO・長瀬智也(36)が異例ともいえる長い“独演会”で会場を驚かせた。

 8日に都内で行われた主演映画「TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ」(来年2月公開)のクランクアップ報告会見、冒頭での出来事だった。Tシャツ姿で登場した長瀬は司会者からあいさつをうながされると、脚本家演出家など多彩に活躍する宮藤官九郎監督(44)と音楽を題材にした作品で、11年ぶりに映画でタッグを組む経緯を語り始めた。

 作品は地獄を舞台にロックバンドを率いる赤鬼・キラーK(長瀬)と俳優・神木隆之介(22)演じる現世転生を目指す高校生らのバンド活動を描く爆笑地獄コメディーで5日にクランクアップ。撮影の熱気が残っているのか、長瀬は「お芝居だけでなく音楽、コメディーといろんなエンターテインメントの要素が含まれている作品としては、こんな作品はきっとこの先もなかなかみれないと個人的には思ってます」と熱弁をふるった。時間にして1分半が経過していた。

 ここで終わるかと思ったが「地獄が舞台なんですけど…」「宮藤官九郎さんじゃなきゃこの作品はできないんじゃないかな」などと話が続き結局、4分半に及ぶ演説となった。

 一般的に会見の冒頭あいさつは「本日はよろしくお願いします」と一言、二言話し、共演者らもあいさつし終えたあとに作品に関する質問を司会者が投げかけ、本題を話し始めることが多い。

 司会者から、その長さを突っ込まれた長瀬は「もういっぺん行きます。よろしくお願いしま~す」と仕切り直して笑わせ、「長かったッスね」。記者の質問時間が短くなったと感じ取り、「僕が長くしゃべりすぎました」と語っていたが、“空気が読めない”独り語りという印象はなく、むしろ作品との出会いをうれしそうに語る姿に「よっぽど今作が楽しかったんだな」と思える、ほほえましい場面になった。となりで聞いていた神木も「本当に愛情とか思い入れが強い」と感嘆しており、長瀬は「違う人がキラーKしたら嫉妬しますね」と作品愛を語り続けていた。

 長瀬がはしゃぐのも無理はない。約5年前から宮藤監督と音楽作品に挑戦することを望んできたことがようやく実現。さらに、劇中バンドで披露する楽曲には大好きなミュージシャンが関わった。

 「楽曲がすばらしいんですよ。『ZAZEN BOYS』の向井(秀徳)さんとか、90年代すごく大ファンだったんですけど、『THE MAD CAPSULE MARKETS』のKYONOさんが曲を作ってくださっている。それを歌わせてもらえるのは、僕にとっては普通よりも意味が深い。それが歌えたことがすごいうれしいなと思いますね」

 音楽を愛する長瀬の琴線に触れたのは衣装やセットも同じだった。牙に角と子供時代にマネしたかったものが赤鬼姿には詰め込まれており、90分かけた特殊メークに金髪のかつら、衣装、ギターの総重量は10キロに及ぶど派手なものになった。

 東映東京撮影所最大の253坪のスタジオには、地獄をイメージした縦10メートル、横51メートルの巨大な背景布をつり、セット組だけで約1カ月の制作期間がかかった。富士山から溶岩石を7立方メートル分持ち込むきめの細かさで宮藤監督オリジナルの“地獄絵図”を作り上げた。

 「日本っぽさがでたらいいなと思っていた。和装で日本が思い描く鬼でメイクも衣装も素晴らしい。衣装は10キロ弱ある。『ドラゴンボール』でいう亀の甲羅、背負っているようなもんですよ。素晴らしいセットで日本の地獄が具体化されていた。こんな地獄だったら悪くない」

 長瀬にとってはぜいたくな“遊び場”が与えられた感覚だったのだろう。長瀬は「音楽もお芝居もそうですけど、あんまり真面目にやっちゃいけないものなんじゃないかなと思っている」とポリシーを掲げており、「今回の作品でできたらいいなって思っていた」と今作で大きな手応えをつかんだ。共演者も口をそろえて「楽しかった」と語る現場だっただけに、長瀬は楽しい思い出をいち早く伝えたいと冒頭での大演説につながったようだ。

 映画は年内に完成予定で来年2月に公開される。「みなさんの中で心が動く作品になれば」と呼びかけた長瀬の興奮がスクリーンからどれだけあふれでているのか。公開を楽しみに待ちたい。

 (デイリースポーツ・上野明彦)

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