「滑舌悪いレスラー」問題を考える

 ここ数年、いわゆる「滑舌の悪いプロレスラー」がバラエティー番組で人気を博している。中でも藤波辰爾(61)、長州力(63)、天龍源一郎(65)の大御所3人と、新日本プロレスの本間朋晃(38)がよく起用されているようだ。

 私は2000年から2012年までプロレスを担当しており、彼らとも頻繁に接していたのだが、「滑舌が悪い」とひとくくりにされる現状にはいささか違和感を覚える。「聞き取りにくい」が正確なところであり、その中で大まかに言って2つのグループに分類できるのではないかと考えている。

 本来の意味での「滑舌が悪い」プロレスラー群に入るのは、藤波と長州だろう。

 1988年4月22日、新日本の沖縄大会で、藤波が師・アントニオ猪木(72)に自身の前髪を切りながら世代交代を直訴する名シーン(タレント・ユリオカ超特Qのモノマネでも知られる)があるが、藤波本人ですらこのシーンのVTRを見ても自分が何を言っているのか聞き取れないというからホンモノだ。

 天龍と本間は「滑舌が悪い」というよりは、声がしゃがれている、あるいはひしゃげているプロレスラー群に入る。2010年に亡くなった新日本の星野勘太郎さんもこのグループで、特に電話の場合、聞き取りにくさが増したことを覚えている。

 プロレスラーはラリアートやチョップといった打撃技、スリーパーホールドやスロートクローなどの絞め技、相撲出身者であれば相撲時代のノド輪などで日常的にノドへのダメージを受けている。これに飲酒(開祖・力道山以来、プロレスラーに酒飲みが多いのはよく知られるところである)なども加わって、このような声に変わっていったのではないかと考えられる。

 とはいえ、取材していた当時、藤波、長州、天龍については、そこまで聞き取りにくさは感じなかったというのが本当のところだ。特に天龍はトークに“天龍節”と言っていいような独特の切れ味があり、時に聞きほれてしまうほどだった。

 コメントが聞き取りにくかったプロレスラーのトップ3は本間、そして長く新日本で活躍し現在はフリーランスの金本浩二(48)、ゼロワンの佐藤耕平(37)だった。金本、佐藤も本間と同じく、しゃがれ声のプロレスラー群に入る。

 聞き取りにくいプロレスラーはおおむねこの2グループに分類できるのだが、例外として“世界の荒鷲”こと新日本の坂口征二相談役(73)がいる。坂口氏はくぐもったような話し方が特徴なのだ。

 トークが重要なバラエティー番組で「滑舌が悪い」ことが売りになるのだからおかしいが、それもプロレスラーの強烈な個性やユニークな経験に裏打ちされているからこそ。そういう点では坂口氏も金本も佐藤も、バラエティー番組でも十分“スター”になり得る逸材だと思う。

 (デイリースポーツ・藤澤浩之)

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