新企画「WASJ」の成功を願う
札幌の競馬ファンにとっては夢のような瞬間が週末に訪れる。87年から始まった世界の名手による競演「ワールドスーパージョッキーズシリーズ」が、「ワールドオールスタージョッキーズ」(WASJ)に名称を変更して29、30日に行われる。
無論、注目すべきは名称の変更ではない。従来は秋の阪神・京都、または東京で開催されていたこのイベント。今年からは施行時期を夏に、そして初めてローカル競馬場の札幌に場を移したのだ。夏競馬の目玉として堂々君臨。武豊騎手も「札幌のファンも喜んでくれるんじゃないかな」と心待ちにしている。
近年は売り上げ減とともに、JRAがローカル軽視の施策を進めてきたフシがある。開催は短縮され、地元ファンが嘆く声を記者も実際に数多く耳にしている。東京、京都などの大箱が集客、売り上げの両面で貢献するのは明白。企業としてその方針はやむなしと思える一方で、全国各地で根付いてきた競馬文化が失われていくのでは、という不安はぬぐえなかった。
ゆえに今回、JRAが下した決断には拍手を送りたい。ローカルへ出張に行けばよく分かる。東西の名手が集まる夏競馬は、地元ファンにとって年に一度のお楽しみ。武豊騎手ら日本の一流騎手だけでも大興奮、そこに海外のジョッキーも集うとなればもはや夢物語に近い一大イベントと言っても過言ではない。
来年以降も継続するか否かは現時点で未定だが、WASJを小倉~新潟という具合にローカルの持ち回り制とすれば、夏競馬にも新鮮味が増す。中央4場(東京、中山、京都、阪神)の開催を増やすことで売り上げ減少に歯止めを掛けつつ、短縮されたローカル開催は密度を濃くすることで盛り上げを図る-。新たなビジネスモデルとも思えるこの試み、競馬の発展を望む人間として成功を願わずにはいられない。(デイリースポーツ・豊島俊介)