【野球】今年のドラフトは野手が豊作
10月22日に開催されるドラフト会議まで1カ月を切った。高校生・大学生は、プロ志望届の提出がスタート。高校生は日本代表が準優勝したU-18ワールドカップで、ほぼ評価が確定。大学、社会人はまだ公式戦を残す。
栄誉ある1位は12人。候補を予想してみたところ、ここ数年なかった傾向に気付いた。野手に逸材がそろっていることだ。
高校生では、オコエ瑠偉外野手(関東第一)と平沢大河内野手(仙台育英)。この夏の甲子園とU-18ワールドカップで一気に評価を上げた。
圧倒的な身体能力を誇るオコエは「守備と足は即戦力」とスカウト陣は口をそろえ、さらに観衆を魅了するスター性を高く買われていた。春から夏にかけての急成長ぶりは、ベテランスカウトに「あんなに伸びた選手は初めて見た」と言わしめたほどだ。
平沢は甲子園で3本塁打。パンチ力のある大型遊撃手は、今も昔も人気の的だ。木製バットへの対応も、高校日本代表メンバーの中で一番という声が多かった。野手の最上位にランク付けている球団もあるときく。
2人とも来年すぐに1軍で活躍できる力はまだないが、将来性は抜群。最初の入札からの1位指名は考えにくいが『外れ1位』になる可能性は十分だ。
大学生では、高山俊外野手(明大)、吉田正尚外野手(青学大)の名前が挙がる。
高山は東京六大学が誇る安打製造機。今秋も開幕3試合で7安打を重ねてリーグ戦通算124安打とし、明大の大先輩、DeNA・高田繁GMが持つ通算最多127安打の記録更新が目前となっている。50メートル走5秒8の足も魅力。外野の層が薄ければ“一本釣り”を狙って来る球団もあるだろう。
吉田は7月のユニバーシアードで金メダルを獲得した大学日本代表で4番を張った。今春からは東都の2部で戦うが「打撃は社会人を含めてアマNo.1」と断言するスカウトもいるなど、評価はむしろ高まっている。6月のNPB選抜との壮行試合では右中間へ特大の一発。8月末の高校日本代表との壮行試合では、広い甲子園で2打席連発。広角に長打が打てる左のスラッガーは、12人の枠に入りそうだ。
そして社会人では、木下拓哉捕手(トヨタ自動車)。遠投120メートル、二塁送球1・8秒台の強肩に加え、183センチ、90キロのサイズも申し分ない。昨秋は日本選手権の優勝に貢献し、今夏も都市対抗で8強入り。打撃もスカウト陣からは「勝負強くなった」と、成長を評価されている。捕手というポジションもあり、レギュラーを固定できていない球団は、最優先で指名を考えるだろう。
ドラフト1位は、投手の指名が圧倒的に多く、野手は少ない。直近の3年で1位指名された野手は
12年 2人
13年 3人
14年 3人
にとどまっている。
ちなみに08~11年は、
08年 5人
09年 4人
10年 4人
11年 4人
だった。
07年以前は高校生と大学・社会人の分離ドラフトや、逆指名制度が認められていた期間があって単純比較は難しいが、ほぼ3分の1以下だった。
今年は前述の5人に加え、今春のリーグ戦と全日本大学選手権で合わせて7本塁打を放ち、2冠の立役者となった茂木栄五郎内野手(早大)への評価も高い。171センチ、75キロの体格を不安視する声もあるが、秋のパフォーマンス次第では、12人の中に入ってくる可能性はある。
もし、5人以上が1位指名されれば7年ぶり。投手優勢だった勢力図に変化が起こるのか。そんな観点からも注目したい。(デイリースポーツ・藤田昌央)