【スポーツ】青木瀬令奈が飛ばせる理由
女子ゴルフ界に一般ゴルファーの希望の星が現れた。その名も青木瀬令奈。今年22歳になったばかりの新星である。生まれは1993年2月8日。赤城山のからっ風が強い群馬県出身で、県庁のある前橋商業高校卒。名前の瀬令奈の由来は、両親が音楽家で「セレナーデ」から取ったという。それだからか、趣味はピアノ。忘れてならないのは大の阪神ファンだということだ。
本題に入ろう。では、なぜ、青木が一般ゴルファーの希望の星なのか。それは、ドライバーショットの飛距離を劇的に伸ばしたからだ。青木の体格は決して大きくも強くもない。身長は153センチと小柄。今年の3月あたりまでは、ドライバーで210ヤードを稼ぐのがやっとだった。
それでは、そんな青木がどうやって劇的な飛距離アップを成し遂げたのか。一般ゴルファーなら誰でもドライバーを飛ばしたいはず、飛ばしてライバルに差をつけたいはず。その秘密は、スイングのイメージを変えることにあった。別の言い方をすれば、スイングイメージを変えるだけで、大幅な飛距離アップを得られたということだ。
青木は今年4月に変革の時を迎えた。そのきっかけは大西翔太コーチとの出会い。大西コーチは女子プロの大西葵の兄でもある。青木は大西コーチにスイングを見てもらった後、こうアドバイスされたと話す。
「自分のスイングはドライバーなのにダウンブローだと言われました。男子ならダウンブローでもパワーがあるので飛距離が出るのですが、女子はパワーがないので、ダウンブローでは球が上がらず飛距離は出ません。なので、大西コーチにアッパーブローで打つよう言われました。それを意識した結果、自分でもびっくりするほど飛ぶようになったのです」
大西コーチは当時を振り返り「青木選手はダウンブローに振っているにもかかわらず、クラブが寝て入っていた。まずクラブを立てて振るイメージで練習して、それからアッパーブローのマスターへと移ったのです」と説明した。
では、青木が自分でもびっくりするような飛距離アップとは、一体どのくらいなのか。それは平均で240ヤード。それまで210ヤードがやっとだった小柄な女子プロがアッパーに打つことだけを意識したら、30ヤードアップを手に入れたわけで、それでツアーを戦うプランは大きく変わった。
「ツアーで戦う上で30ヤードの飛距離増は世界がまったく変わります。番手は3つは楽になります。バーディーを取らないとプロではやっていけないのですが、それが大分楽になりました。何より、私も優勝を狙えると思えるようになりました。下が硬かったり、追い風だったりすれば、250ヤード飛ぶこともあります」
青木によれば、ドライバーのアッパーブローの打ち方は、ボールをダウンブローで打っていた時より左目に置き、やや右体重のまま打ち抜く感覚だそうだ。
最後に青木のデータを書き添えよう。ダウンブローで打っていた今季サイバーエージェントレディースまでは9試合で予選通過1回(Tポイントレディースの25位)だったが、アッパーブローに変えたワールドサロンパスカップで4位に入った以降は、20試合で予選落ちが7回と状況が逆転した。
青木は今、早々と来季の初シードも決め、今の目標をツアー初優勝へとシフトした。飛距離アップは何よりの武器であり、そのプラス面を十分に享受しているといえる。飛ばしはゴルフの最大の魅力。青木を変えたアッパーブロー。一度は試してみる価値がありそうだ。(デイリースポーツ・松本一之)