【サッカー】澤の“最後の相方”に期待
昨年12月27日、サッカー女子日本代表を長年率いてきたMF澤穂希(37)が現役を引退した。記録にも、記憶にも残るレジェンドのラストマッチも、ここで振り返るまでもないほど感動的だった。
その澤の“最後の相方”となったのが、現在20歳のMF伊藤美紀だ。守備的MFとして、中盤に位置取った17歳差コンビ。普段は伊藤美が攻撃参加し、澤がバランスを取ることも多いが、澤が前に出る場面は伊藤美が周囲を見て下がるなど、息のあった連係を見せ、皇后杯優勝に貢献した。「頼る人はいなくなるけど、澤さんのプレーは頭に残っている」。身長150センチと小柄で小動物系の愛くるしいいでたちながら、伊藤美は澤の意志を引き継ぎ、チームを引っ張る覚悟だ。
宮城・常盤木学園高からINAC神戸に入団2年目のシーズンが終わった。当初は「周りがみんなすごい選手で緊張しました。ミスは許されないんだと思ってビクビクしていた」という。今季は主力に定着するも、自信を持ちきれずにいた。
しかし澤の言葉に救われた。「ミスしたらカバーするから、自由に、怖がらずにやっていい」。顔を上げると、隣には大きな大きな背中があった。ミスをしてしまったときも「やり続ければ大丈夫」と声をかけてくれた。「気持ちも楽になったし、自分らしくプレーできる環境をつくってくれた。ミスのあとは取り返す、同じミスを繰り返さないことが大事」と考えるようになった。
日々の練習から充実していた。守備で体を張ること、誰よりも走ること、クリアボールやセカンドボールへの反応など、感じることは多かった。澤の気持ちを出すプレーにも刺激された。今では、代表常連の大先輩らに引けを取らず、「慣れもあるけど、周りがうまいから楽しみたいと思っている。意志を出したい」と言えるようにもなった。
伊藤美がINAC神戸に入団直後の一昨年5月、大阪で行われたなでしこジャパンの国際親善試合を、新人研修の一環でスタッフとして手伝った。高校を卒業したばかりで「裏方の方の支えを感じる」と新鮮な表情で話していたが、そのときから既に「いつかは自分もこのピッチに立つ」と誓っていた。
「この1年でやれることも増えた。ボランチはチームの一番大事なポジション。もっと中心になってやりたい」。伊藤美は、偉大な相方の背中を追いかける。日本代表の佐々木監督の口からも、澤の話をする際に「伊藤さんももっとガツガツやらないと」と名前が挙がった。少なくとも代表監督に“認知”と“期待”はされているわけだ。この2年間の貴重な経験を胸に、大きく飛躍してほしい。(デイリースポーツ・國島紗希)
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