【野球】清原容疑者 球界の影響と今後

 元プロ野球選手・清原和博容疑者が覚せい剤取締法違反(所持)の疑いで逮捕-。その一報が流れたのは、各球団の春季キャンプが始まったばかりの2月2日。球春を告げるはずの球界に、凍(い)てついた風が吹いた。

 2016年は日本球界にとって、大切な1年だ。今年8月には20年の東京五輪における野球の種目復帰が正式決定となる見込み。小中学生の野球人口減少が叫ばれる中、プロアマを含めた球界全体で盛り上げ、野球振興へつなげなければならない。そういう位置づけられていたからだ。

 プロ野球の熊崎勝彦コミッショナーも「昨年もセ・パともに観客動員を伸ばしているが、今年はより一層盛り上げていかなければならない」としていた。

 ところが昨年10月の巨人3選手の野球賭博問題から日を置かず、プロ野球のイメージを大きく損ない、支えてくれる多くのファンさえも裏切るような事態が起こった。

 元選手が起こした事件であり、日本野球機構(NPB)などが責任を負うような事案ではない。そもそも法律を守るということは、野球選手でなくても当然のこと。ただ、五輪復帰を控えた中でプロ野球に対する信頼という点では、負った傷が浅くないのは事実であり、一OB選手が起こした事件だけでは片付けられない。

 事件直後に熊崎コミッショナーは「元選手とはいえ、野球は特に青少年のあこがれのスポーツの一つ。現役を去ってからも模範であり続けなければならない」とコメントし、すぐさま各球団のキャンプ地で始まっている有害行為の再発防止研修で薬物関連の内容を加えることを指示した。

 今後もNPBや球界OB、現役選手などを含めて危機感を共有することが大事だ。毎年の新人選手研修会では禁止薬物の講義を行っているが、他の選手に対しては各球団に委ねている点も、見直しが必要かもしれない。

 事件に関しては今後の推移を見守るしかない。ただNPB・井原敦事務局長が「注意喚起だけはきちんとしなければいけないと思う」と話すように、より一層、襟を正す必要はあるだろう。逆境の時にこそ、その在り方が求められる。野球の底力に期待したい。(デイリースポーツ・中田康博)

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