【競馬】売れに売れた海外馬券 今後は新たな競馬文化として根付かせる努力を

 日本初の海外馬券発売となった凱旋門賞が終了した。売上金は、関係者の予想を大きく上回る41億8599万5100円。この数字をどう捉えるべきだろうか?個人的には、もっと売れる可能性を持った魅力的な馬券だと考えている。

 今回、私は現地フランスで取材を行った。ただ、そんな中で出走全馬に手を伸ばせないもどかしさもあった。日本なら美浦や栗東のトレセンで各陣営の生の声やデータを集めることができるが、海外は取材に対する文化も大きく異なる。外国馬に関しては、必ずしも思い通りにいかなかったというのが率直な感想だ。果たして、どこまで競馬ファンのニーズに応えられたのか。自問自答を繰り返している。

 馬券を買う人のアプローチ法は人それぞれ。例えば、(1)陣営の感触を元にする情報派、(2)ラップや持ち時計などから勝ち馬を探っていくデータ派、(3)距離やコース適性を遺伝子的に考察する血統派、(4)直前の追い切りを重視する調教派などに分類するとする。今回は(3)の方にはある程度の判断材料があった気はするが、(1)、(2)、(4)の方が必ずしも積極的に馬券を買える状況ではなかったように思う。

 逆に言えば、もっと前述した方たちの購買意欲を高めることができていれば、売り上げは伸び、さらに盛り上がっていたとも考えられる。日本のレースでは当たり前のように、馬券購入前に馬体重やラップ、調教時計など予想に必要な詳細な情報が手に入る。この安心感こそが、馬券販売額世界一と言われる日本競馬を支えており、海外とは決定的に違う点だからだ。

 今のように情報が詳細になったのは、ファンの声に加え、JRAや報道に携わってきた先人たちの企業努力が大きい。競馬をあらゆる角度から分析可能にし、より奥深く、楽しいものにしている。一方、海外では日本のような細かいデータは発信されない。今回のケースで日本のファンに馬券を買いたいと思わせるには、どこまで海外競馬を日本式に近づけられるかが鍵。正直、ここが一番難しい。

 フランス競馬を生で見て感じたのはスポンサーの存在と、馬券販売に対する日本との温度差。ある程度、スポンサー収入で支えられているためか、日本のようにサービス精神旺盛に、馬券を売ろうという熱がないように思えたのだ。ゆえに、提供すべき情報も最低限。競馬場の馬券販売窓口も少なく、締切前は人であふれかえっていた。レースに感じた厳かな雰囲気や伝統とは、一線を画していた。

 仮に日本競馬にスポンサーが導入されれば、ファンへの還元を第一に考えるだろう。それが、馬券の売り上げにつながることを知っているからだ。そういった考え方やノウハウは、どんどん海外へ提供してほしい。日本は馬券販売で成功しており、その点では世界をリードする存在。十分な情報提供や顧客満足度の高いサービスなど、馬券が売れる方法に、耳を貸さない人はいないはずだ。

 一方、日本の競馬報道に携わる我々も、外国馬のより詳細な情報を引き出せるように働きかけ、取材する必要があるだろう。そうやって、いい予想の材料がそろえてこそ、ファンにも心から海外競馬を楽しんでもらえる。日本人は「熱しやすく冷めやすい」人種だと言われる。せっかく海外馬券という選択肢が増えたのだから、サークル全体で協力し、新たな競馬文化として根付かせたいものだ。(デイリースポーツ・大西修平)

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