【野球】ファンに認められたサブロク双亮の“二刀流”
芸人と独立リーグの投手という異色の“二刀流”は、大成功だったと言っていいだろう。四国アイランドリーグplusの愛媛マンダリンパイレーツでプレーしたお笑いコンビ「360°(さぶろく)モンキーズ」の杉浦双亮(40)=登録名・サブロク双亮=が、昨秋のトライアウト合格からスタートした1年間のチャレンジを終えた。
その結果は、いい意味で予想を裏切るものだった。芸能活動を続けながらリーグ戦9試合に登板し、13回2/3を投げて3失点。防御率1・98という見事な数字を残したのだ。
名門・帝京高野球部出身とはいえ、お笑いを本職とする40歳のオールド・ルーキーがここまでやれると想像した人がどれだけいただろうか。前期リーグ(4、5月)こそリリーフで結果を出せず苦しんだが、制球力の安定や新球の習得に取り組んで迎えた後期(8、9月)は見違えるほどの投球を披露した。
8月20日の初先発マウンド(対香川)で4回2/3を無安打無失点の快投。さらに9月9日の高知戦でも先発を任され、5回4安打無失点と好投した。直球は120キロ台前半ながら、その直球をより早く見せるために80キロ台のスローカーブを習得。得意のツーシームなど変化球を駆使して相手打者を打ち取った。投手として仕事を果たし、「40歳でもあきらめずに努力すれば成長できる。不可能はないんだと思いました」とサブロク双亮は語った。
マウンドを降りれば本業の笑いでベンチを盛り上げ、チームに貢献した。勢いづいたチームは球団初の前後期連続優勝を成し遂げ、徳島とのチャンピオンシップも制して年間王者に輝いた。群馬と対戦した独立リーグ日本一決定戦「グランドチャンピオンシップ」は2勝3敗で惜しくもタイトルを逃したが、愛媛にとっては実りの多いシーズンだった。
“二刀流”と言われる通り、シーズン中はイベント出演やテレビ番組の収録など、芸人としての仕事があるためチームを離れることも多かった。群馬とのグランドチャンピオンシップ第1、2戦(10月1、2日)も、長野でのイベント参加のためベンチから外れた。
「野球と芸人の仕事の両立はやっぱり簡単ではなかったですね。久しぶりに芸能の仕事に行くと、笑いの勘が鈍ってるなあと思うことがよくありました。ほかの芸人がボケてるのに、うまくツッコミができなかったり…。逆に野球に戻ると、今度は野球の勘が鈍ってて…。ヘコむこともありました」
それでも、うまくバランスを取りながら全力で“二刀流”を貫いたサブロク双亮。「話題集め」の側面だけではなく、その巧みな投球でファンをうならせ、チームの優勝に貢献した。「愛媛のファンの方々の反応もだいぶ変わりました。入団当初は少し距離を感じていたけど、最後は大きな声援をいただけた。僕を受け入れてくれたのかなと思います」。本気で野球に取り組むサブロク双亮のチャレンジ精神が、球場に訪れた人々の胸を打ったのは間違いない。(デイリースポーツ・浜村博文)