【スポーツ】フィギュアの次世代スター育てる浜田コーチの視野と柔軟性
フィギュアスケートのグランプリ(GP)シリーズがスケートアメリカ(21日開幕)から始まった。ファンの心躍る季節だが、先に始まっているジュニアGPシリーズも今年は盛り上がっていた。日本大会で優勝した坂本花織(16)=神戸ク、スロベニア杯で日本人女子4人目のトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)を成功させた紀平梨花(14)=関大KFSC、昨季の世界ジュニア女王の本田真凜(15)=関大中=の3人が、12月の同ファイナル(マルセイユ)に進出した。
そのうち紀平、本田は浜田美栄コーチ(56)の門下生だ。ちなみにシニアでは昨季の全日本女王で四大陸選手権を制した宮原知子(18)=関大=も教え子。“チーム浜田”の勢いは今のフィギュア界を席巻している。
「簡単なことをていねいに。難しいことを大胆に」と指導のモットーを掲げる同コーチ。練習ではエッジミスなどで取りこぼしがないように、ジャンプやステップの微細な部分も徹底して目を光らせる。
一方で、枠にとらわれない「大胆さ」も特長だ。とにかく視野が広い。ヨガ、新体操、バレエの講師を招へいし、時にはタップダンスや水泳などの動きも参考にする。その幅広さには驚くが、他ジャンルに食指を伸ばしても中途半端に終わらせないのは、確固たる目的意識があるからだ。
例えば、新体操に興味を持ったのは、フィギュア選手に腰痛が多いことからだった。足を後方から頭上に伸ばし、上に伸ばした手で足をつかんで保つビールマンポジションは原因の一つだと考えられるが、同じようなポーズをする新体操には腰痛が少ないと聞いた。
ビールマンは「ブレードに手を引っかけて(足と手で)引っ張るので体が硬くてもできる。でも、体が(弓のように)U字型になるのは危ない」と同コーチ。一方で胸、肩からしなやかに柔らかい新体操の選手は違う。彼女たちの動きやトレーニング方法を参考にすることで、腰への負担を減らそうと考えた。「私たちのころはフィギュアだけをやっていたらよかった。でも今は違う。知らないことを知れば(演技の)幅が広がる」と貪欲だ。
拠点とする関大のリンクでは、長野五輪男子代表の田村岳斗コーチ(37)、グルノーブル五輪女子代表の岡本治子コーチ、アイスダンスで五輪2大会に出場したキャシー・リードコーチらでチームを組んで、40人弱の教え子を指導する。「私だけ五輪経験がない。国際試合の経験もほとんどない。人に支えられているんです」と感謝する。ヨガや新体操の指導者とも「いい方々と長くおつきあいできたことが財産」。大学卒業時からフィギュアの指導者一本。35年間変わらない熱意と広い視野、柔軟な思考が次世代のスター候補を生み出す源となっている。