【野球】楽天 栗原健太コーチ、オコエらへ栄光と挫折の経験注ぎ込む
「まだバットを握ると打ちたくなってしまいますよね」。そう言って笑うのは、今季限りで17年間の現役生活に別れを告げた楽天・栗原健太2軍打撃コーチ(34)だ。11月1日から岡山県倉敷市で行われている秋季キャンプで指導者デビュー。身ぶり手ぶりで若手選手たちに熱っぽくアドバイスを送り、新人コーチとして奮闘する毎日だ。
豊富な練習量を礎とするカープの良き伝統を受け継ぎ、球界を代表する和製大砲にのし上がった男。経験に裏打ちされた栗原コーチの手腕に、球団の期待も大きい。今季1軍昇格こそ果たせなかったが、ファームで過ごす中で、コーチとしての素養は既に芽生えていた。「1シーズン一緒にいたので、バッティングを見ていて、もっとこうした方がいいのにな、こうしたらもっと良くなるのになと思うところが、たくさんありました。それが分かっているので入りやすいですね」。同じユニホームを着て1年間過ごしたからこそ、“弟子たち”の長所も短所も分かっている。
指導者として最も重視するのは対話。元来、打撃理論を語らせたら止まらないタイプだが、「押しつけはだめ。僕の感覚を押しつけようとすると感覚がずれてしまう」。じっくり話しそれぞれの特性を把握した上で、合った練習法を与えていく。「ティー打撃のやり方でも、いろいろあるんです。一番いいものをチョイスしていきたいと思っています」。来季プロ2年目を迎えるオコエについても「振る力はある。タイミングだったりとか上体が突っ込むとか、技術的な段階を踏んでいかないといけないけど、振って覚えて数をこなすこと。形は、振る力をつけてからになるので」と課題や方向性を明確に把握。新人コーチとは思えないほど、早くも指導の流儀を確立している。
「昨年、入団テストで獲っていただきましたが、選手として力になりたかった。でも、こうしてコーチとしてお話を頂いた。1人でも上(1軍)で活躍できる状態に持っていきたい。力になりたいんです」。高卒で入団して芽を出し、主力に上り詰め、栄光も挫折も味わった栗原コーチ。そのすべての経験を、新たな道に注ぎ込む。(デイリースポーツ・福岡香奈)