【野球】リーダー不在の侍ジャパンに危機感
何かが足りない…。そんな思いだけが残った。先日行われた野球日本代表「侍ジャパン」の強化試合を見ての感想だ。11月10からメキシコ代表、オランダ代表と戦った4試合。結果は3勝1敗も、来年3月のWBCへ大きな手応えはなかった。
シーズン後の試合だけに選手のコンディションを考えれば難しい面はある。ベストな選手招集もできなかった。4試合で29失点の投手陣。集中力を欠いたプレーも出た守備陣。課題は数え上げればきりがない。ただ、それよりも個人的に不安を覚えたのはチームに“芯”がないこと。チームリーダーの不在だ。
小久保監督は「メンバーを見ても常連というか、そういうメンバーで集まるチームができてきている。1人を名指ししなくても大丈夫という判断です」と、今回の代表で主将を置かなかった。主将の有無は別に、今の代表がそれほど成熟されたチームとは思えない。
確かに若い選手が多いだけに勢いはある。オランダ代表との2試合では、ともに日本ハム・大谷翔平の一打から打線が目覚め、ビッグイニングを作った。侍ジャパン関係者も「選手の雰囲気は、すごくよかった」と、和気あいあいとした様子も見られた。しかし、それは小久保監督が目指す「結束」とは違う。
代表担当として取材した09年のWBCはイチローというスーパースターがいた。ただ、06年の第1回大会よりも川崎宗則や青木宣親らはイチローとの距離感を縮め、イチローもダルビッシュら投手陣と積極的にコミュニケーションを取った。
本大会に入るとイチローは不調に陥る。それでも青木や岩村明憲らは一様に「イチローさんの復調は間違いなくチームのプラスになるから」とし、復調まで奮闘を続けた。そして、最後に世界一への決勝打を放ったのはイチロー。そこに確かな「結束」があった。
イチローのような存在は他にいない。だが劣勢の展開が多かった強化試合で淡泊な攻撃が目立ったのも事実。流れを変えた打者・大谷も、本戦で投手中心の起用となれば出場は限定される。そういう意味で、WBCでの実績を持つソフトバンク・内川らがチームを導く存在として鍵になるのではないだろうか。
WBC本戦と強化試合を比べることはできない。ただ小久保監督は「この4試合でできないことは本戦でもできない」と話していた。ならば、この4試合の内容をヨシとすることはできない。次に代表が集まるのは来年2月の宮崎合宿。どんなチームリーダーが現れ、どんな「結束」が生まれるのか。注目したい。(デイリースポーツ・中田康博)