【野球】二神氏、球団広報で第二の人生スタート 09年ドラ1入団
今年の高知・安芸の秋季キャンプで見慣れない背中があった。阪神の球団広報へ、正式に就く予定となっている二神一人氏(29)。今シーズン終了後、既に第二の野球人生をスタートさせていた。
「(今後について)覚悟はしていたつもりでしたけど、まだはっきりと決めていません。家族もいるので、長い目でみてどうするか決めようと思います」
10月1日、球団から兵庫県内のホテルに呼ばれ戦力外通告を受けた。法大から09年ドラフト1位で阪神に入団し、プロ7年間で27試合に登板。0勝3敗で防御率5・31。今季は一度も1軍のマウンドに上がれず、静かにユニホームを脱いだ。
まだ29歳。今後、さまざまな生き方がある中で球団広報の道に進むことを決意した。早速、秋季キャンプから“研修”を開始。フロントの立場から若手選手に声をかける姿は、どこか新鮮だった。また、二神氏の話を親身になって聞いている選手の姿も印象的。今季まで共に戦っていた仲間同士、そこには絶妙な距離感があった。
「片山さん(ブルペン捕手)がよく言っていたのは『ガッツポーズが出るような場面で投げると成長する』ということ。その前に交代することが多いというか…。ピンチの時に次の投手が来て、ガッツポーズする前に終わってしまうというかね。ガッツポーズが出る場面を経験できているのはいいことだと思います。僕は、あまりそういう場面で投げられなかったので…」
先日、ある投手を取材していると、シーズン中の試合で出たガッツポーズの話題になった。すると、横にいた二神氏が自身の経験を元に口を開き始めた。後輩投手はその話に耳を傾け、何度も何度もうなずいていた。自身が成し遂げられなかった大きな夢を、後輩に託したいという思いがあるのかもしれない。その場は、あたたかい空気に包まれていた。
プロ野球選手として、タイガースを背負う大投手にはなれなかった。今度は、次代を担うかわいい後輩たちをあたたかく見守っていく。第二の野球人生は、チームを支える裏方さん。二神氏の表情は晴れ晴れとしている。(デイリースポーツ・中野雄太)