【スポーツ】パリ五輪マラソン代表 透明性は高かったMGC選考 好評も検証とアップデートは今後も必要

 マラソンのパリ五輪代表選考が、10日の名古屋ウィメンズマラソンで全て終了した。男子は昨秋のマラソングランドチャンピオンシップ(MGC)1位の小山直城(ホンダ)、同2位の赤崎暁(九電工)、同3位の大迫傑(ナイキ)、女子は同1位の鈴木優花(第一生命)、2位の一山麻緒(資生堂)、1月の大阪国際女子マラソンで日本新記録を更新した前田穂南(天満屋)に決まった。28年ロサンゼルス五輪代表選考に向け、“MGC方式”の課題を検証する。

 男女3人のパリ五輪マラソン代表を選ぶ戦いがついに終了した。東京五輪に続いて採用されたMGC方式。選考方法はMGCの男女上位2人が一発内定し、残る1枠は、MGCファイナルチャレンジと呼ばれる対象大会で設定記録突破者の最上位か、突破者が出なければMGC3位の選手が手にする決まりだった。

 全行程を終え、日本陸連の感触はおおむね好評だった。瀬古利彦氏は「うわさ話ですけど、現場の人たちも『この方法がいい』と(言ってると)聞いている。悪いシステムではないと思っている。アップデートして、つくっていければ」と継続採用に前向きな意見。強化委員会の高岡寿成シニアディレクター中長距離・マラソン担当も「非常によい仕組みと感じている」とうなずいた。

 代表選考の透明性が高い点では、選手にとっても選ぶ側にとっても、プラスに捉えられていると言えるだろう。ただ、「アップデート」の余地はまだ感じさせる部分がある選考だった。

 そもそも東京五輪を機に発足したMGCには、五輪とほとんど同じコース(新型コロナ禍で開催地が札幌移転にはなったが)で走る“仮想五輪”としての意味合いも強かった。昨秋のMGCは冷たい雨に見舞われたことで、猛暑が想定されるパリ五輪の気候とは大きく異なる条件下だった。マラソンは同じ条件が存在しない競技とはいえ、パリ五輪選考という点においては、国内開催で異なる場所、時期、気候と本来意図していた大会からは大きく外れてしまったのも事実。もう少し想定を近づけることも可能だったように思う。

 選考方式について『優・良・可』で問われた瀬古氏は、「男子は…あんまりいうと怒られちゃうから」と苦笑いで前置きしつつ、「僕の意見ですよ。『良』ぐらい。『優』まではいかなかった。思っていたような選手がもう1人入ってほしかった」と吐露した。MGCが想定していた気象条件から「程遠くなってしまった」と話したように、節々に選考方法への反省もあった。

 一方で瀬古氏は日本記録も出た女子は『優』と位置づけた。MGCファイナルチャレンジにおいて圧倒的な記録を出すという目標が、前田の記録を後押しした一因ではあっただろう。最終的に設定記録突破者は3人出た。ただ、もし前田の日本記録を破る選手が現れれば、前田は五輪に出られないし、MGCの順位が優先される補欠にもなれない。“想像以上の結果”が出た時の想定は、甘かったようにも感じる。

 高岡氏は「前回(の東京五輪)はコロナの影響で検証できませんでしたし、今回はパリを見ないと言えないと思う」と、まだ検証段階だと話した。五輪のマラソンでは、04年アテネ五輪で野口みずきが金メダルを獲得して以来、表彰台から遠のいている。今後、日本が再び世界と戦うために、灼熱(しゃくねつ)のパリでの『答え合わせ』が教訓となるはずだ。(デイリースポーツ・田中亜実)

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