【ファイト】急死の曙さんを悼む 18年前についでもらった最高の一杯 優しさにあふれた横綱との時間
大相撲で外国出身初の横綱となった第64代横綱で格闘技でも活躍した曙太郎(本名同じ)さんが4月上旬に心不全のため、都内の病院で死去していたことが11日、分かった。54歳だった。
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あの一杯は忘れられない。
2006年2月、新日本札幌大会後のこと。このシリーズから地方巡業に参戦していた曙さんと、酒席をともにする機会に恵まれた。
ベテランカメラマンにおすすめされたこぢんまりとした居酒屋。我々記者陣が到着すると、曙さんはすでにカウンターの端っこに大きな体を押し込めていた。目の前には焼酎の瓶。力士の飲み方はえぐい。そんな嫌なイメージが頭をよぎったものの、曙さんはゆっくり、じっくり、お酒を味わっていた。
気を使って動こうとする記者陣を制したり、自ら焼酎瓶を持ってお酌してくれたり、優しさがにじみ出た席となった。しかし、酒を飲むとすぐに真っ赤になってしまう私を見ると、にんまり。「飲めー!」と、勢いよく注がれ、ヤバい、と思ったが、量はグラスの半分もいかず。笑顔の曙さんを前に、その一杯をしっかり飲み干した。
プロレス転向直後には、当時全日本の社長だった武藤敬司に教えを請うた。「後ろ受け身が怖いですね」と、相撲にはない動きに戸惑っていたことも思い出す。未体験のジャンルでも、自分を偽らず、飾らず、等身大で挑戦していた印象的だった。(元プロレス担当・鳥井裕二)