【松本浩彦医師】「こむら返り」は病気の予兆かも…予防と対処法
【Q】最近、就寝中に足がつって起きることがあります。重篤な病気のサインでしょうか。(50代男性)
【A】寒くなると、寝ている時に足がつるという方が増えてきます。とくに朝方によく発症します。
先にお答えしておきますが、重要な病気の予兆であることは、まずありません。
「こむら返り」は、正確には「腓腹筋痙攣(けいれん)症」といい、ふだんあまり使っていないふくらはぎの筋肉や神経が異常な緊張を起こして、収縮したまま戻らなくなることを言います。
長時間の運動のあとや、運動不足の人が急に山登りをしたとか、体力が落ちているときにも起こります。また、高齢者だと慢性的な運動不足があるため、ちょっと足を伸ばしたり、衝撃を受けただけでも簡単に起こります。
病的な原因としては、体液の電解質異常、狭心症、肝機能障害、多発性神経炎などがありますが、よほどひどい場合を除いては、先に述べた筋肉疲労が原因と考えてよいでしょう。
夜に起こりやすいのは、疲労の原因である乳酸が、昼間立ち働いている間にふくらはぎの筋肉にたまり、代謝・排出されないで寝てしまうからです。
寝ているときは下半身の体温が低下し、さらに布団の重みで足先が伸びた状態になっていますので、よけいにこむら返りが起こりやすくなるのです。筋肉の冷えとビタミンB1の欠乏も、こむら返りを起こしやすくします。
予防法としては、筋肉を冷やさないこと、寝る前にマッサージやストレッチをするなど、意外に簡単なことです。漢方で芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)というものが有効である場合が多く、これを1包、就寝前に飲んで寝るというのも一手です。
寝ている間に起こるこむら返りについては、重篤な病気の兆候と考えるより、まずは慢性的な運動不足が原因だと考え、日ごろからウォーキングやマッサージで、下半身をケアするように心がけてください。もし、夜中に脚がつってしまったら、脚を挙げるよりも、むしろその場で立つか座って下さい。痛くても何度も床の上で足踏みする方が、筋肉の動きで血流が改善し、早く治まります。これホント。
◆松本浩彦(まつもと・ひろひこ)兵庫県芦屋市・松本クリニック院長。内科・外科をはじめ「ホーム・ドクター」家庭の総合医を実践している。同志社大学客員教授、(社)日本臍帯・胎盤研究会会長。