八重樫2階級制覇 流血の打ち合い制す

 「WBC世界フライ級タイトルマッチ」(8日、両国国技館)

 WBCのトリプル世界戦が行われ、フライ級は同級6位の八重樫東(30)=大橋=が、王者の五十嵐俊幸(帝拳)を3‐0の判定で破り、新王者になった。元WBAミニマム級王者の八重樫は2階級制覇を達成した。スーパーフェザー級は同級10位の三浦隆司(28)=帝拳=が、王者ガマリエル・ディアス(メキシコ)に9回TKO勝ちし、新王者に。バンタム級は山中慎介(30)=帝拳=が同級1位のマルコム・ツニャカオ(真正、フィリピン)に12回TKO勝ちし、3度目の防衛に成功した。

 八重樫はリング上で「夢じゃないですよね」とつぶやいた。飛び級での2階級制覇で王者に返り咲いた。ジムの大橋秀行会長にほおをつねられ、実感がわいた。「僕みたいに小さい選手が、大きな階級に挑戦できて、それをクリアして自信になった」と胸を張った。

 文句なしの判定勝ちだった。序盤から低い体勢でトリッキーな動きを織り交ぜ、懐に飛び込みボディーを狙った。4回終了時の公開採点では3‐0でリード。得意とする接近戦に、五十嵐を引きずり込んだ。11回の振り下ろす右フックなどで、何度もダウン寸前に追い込んだ。

 天敵だった。五十嵐とはアマ時代に4度対戦して全敗。挑戦決定後、長男の圭太郎くん(7)に「勝てるかな?」とこぼすほどだったが「勝つと思えば勝つ」と返され、目が覚めた。

 土居進フィジカルトレーナーの下で、1日2000回にも及ぶ腹筋運動など、過酷な肉体改造トレーニングを敢行。スパーリングは200回をこなし、苦手のサウスポー対策を重ねた。

 最終回まで攻め続け、無尽蔵のスタミナでリベンジを達成した。「ベルトよりも男のプライドがあった」‐。今夏には彩夫人(29)が第3子を出産予定。「圭太郎、お父ちゃんはやっぱり世界一強いんで、これからもお父ちゃんの背中を見て育って下さい」と、父の威厳を見せつけた。

 昨年6月、現WBA世界ライトフライ級王者・井岡一翔とのミニマム級王座統一戦で敗れた。前日、井岡から激励のメールが届いた。2階級制覇に「また、井岡くんに並べて良かった。2人でボクシング界を盛り上げたい」と誓った。あれから10カ月。30歳になった男が見事に復活した。

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