袴田さんに名誉チャンピオンベルト
1966年の「袴田事件」で80年に死刑が確定し、静岡地裁の再審開始決定を受け3月27日に保釈された元プロボクサーの袴田巌さん(78)が19日、東京・後楽園ホールで53年ぶりにリングに立った。WBCから授与された「名誉チャンピオンベルト」を腰に巻くと、Vサインを掲げた。
都内の病院から付き添って後楽園入りした姉・秀子さん(81)によると、袴田さんは外出届に「後楽園に帰る 袴田巌」と自分の手で記したという。
48年間に及ぶ拘留生活で拘禁症と認知症を患い、日常会話のすれ違いも多いが、年間19戦の日本記録保持者で、かつて青春の血を燃やしたリングには消し去れない思いがある。
セレモニーでは世界、東洋太平洋、日本の各王者がずらりと並んだリングに上がり、まばゆいライトを浴びた。表情は一つも変わらない。名誉ベルトを腰に両手でVサインを掲げ、一礼すると大きな拍手が送られた。
秀子さんは「最初は無罪放免になってボクシングジムを開くと言っていた。再審が棄却されるたびに落ち込んで、死刑が確定してからガクンとおとなしくなった。拘禁症と認知症が交じっているのが現状ですが…巌は闘っていたのかな、と思いますね。リングの上で闘うということがあったからこれまで生き延びた、と思っています」と、感無量だ。
ボクシング界などの根気強い支援もあり、14年3月の再審開始とともに釈放された。だが、静岡地検は即時抗告。無罪への闘いはまだ続いている。秀子さんは「頑張って参ります」と気丈に話し、日本プロボクシング協会の大橋秀行会長(49)は「これからも支援を続けていく」と力強く表明した。
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