帝里が号泣完敗…テテに0‐3大差判定
「IBF世界スーパーフライ級王座決定戦」(18日、神戸ポートピアホテル)
プロ21戦目で初の世界戦に臨んだ帝里(ている)木下(28)=千里馬神戸=は、ゾラニ・テテ(26)=南アフリカ=に0‐3の判定で完敗し、王座獲得に失敗した。国内初となるホテルでの世界戦でプロ初黒星を喫した。同王座は前王者の亀田大毅が返上したため空位となっていた。
大差での判定負けに、帝里はリング上でぼう然とうつむいた。「何もできず情けない」。言葉を絞り出した控室での会見中、長女・ももこちゃん(3)が無邪気に膝の上に飛び乗ると、こらえきれなくなった。
テテへの恐怖心でここ2日間、眠れなかった。「布団の中に入ってずっと震えていた。だけど、子どもが家に帰ってきたら落ち着けた。娘に癒やされた」。そう言いながら号泣し、愛娘を抱きしめた。
リーチで11センチ上回る相手が最後まで遠く、的確なジャブを浴びた。11回、やっと懐に入り左右の連打を繰り出した。最終12回も、ホテル中にこだました「帝里コール」を背に果敢に飛び込んだ。だが、挽回するには遅すぎた。
元世界王者・徳山昌守氏にあこがれ、大阪朝鮮高でボクシングを始めた。高校3年のインターハイに帝里の原点がある。優勝候補と目されながら、無名相手に1回戦負け。敗退後、台風の中、会場の周りを何周も走った。当時の監督・梁学哲氏はその姿に成長を確信した。
2週間前、スパーリングでまぶたを切り、高熱を発症した。万全でない中、初の世界戦で力は出し尽くした。「世界の距離は分かった。また一から出直し」。プロ初黒星で流した涙は無駄にはしない。
12歳上の摩由子夫人(40)は来月に第2子を出産予定。身重で高齢出産を控えているにもかかわらず、マッサージや食事面で支えてくれた。「応援してくれる人がいる限り、僕は期待に応える。あきらめることはない」。反骨の男・帝里は世界の舞台を目指し、再び立ち上がる。
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